独立したはずの子どもが、週末ごとに孫を連れて帰ってくる。「親孝行」のつもりかと思いきや、その実態は、食費を浮かせ、親をタダ働きさせる「実家の搾取」でした――。本記事では、FPの川淵ゆかり氏のもとへ寄せられた相談事例をもとに、現代の親子間マネー防衛術を学びます。※事例は、プライバシーのため一部脚色して記事化したものです。
「ママはお買い物じゃないよ」孫の無邪気な一言に、年金25万円の65歳祖母は凍りついた。実家を〈無料託児所&食堂〉使いする33歳娘の“タダ乗り”【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

娘の嘘がバレた瞬間

そして、とうとう妻が爆発する日がやってきます。

 

ある日、いつものように孫を置いて出ていったまま、娘はなかなか戻ってきません。心配した妻が孫に話しかけました。「ママ、遅いね。ちょっとお買い物に行ってくるっていってたのにね」すると孫はこういったのです。

 

「お買い物じゃないよ。ママ、エステだよ。ママがきれいだとパパも僕も幸せなんだって」

 

その言葉に、妻の表情が凍りつきました。娘が戻って来るや否や、妻の怒号が響き渡ります。

 

「あなた、孫を私たちに預けてエステに行っていたの? 私たちの生活も決して楽じゃありませんよ! これからまだまだ教育費もかかってくるんだから、エステに行く暇があったら働きに出なさいよ! うちは託児所じゃありませんよ。もう私たちに頼らないで!」

 

Aさんは「たしかに高校・大学になったときには援助はできないよなぁ」と、孫が高校生になったときの自分たちの年齢を思い、「自分たちは将来、老人ホームに入る資金の余裕があるのだろうか?」とふと不安になります。そこで、今後も続くセカンドライフについて考えてみることにしました。

老後は後半が難しい

筆者は「住宅ローンは後半が大変」とよくいっていますが、老後生活も同じです。どちらも将来の「みえないリスク」があるからです。

 

もうずいぶん昔の話になりますが、60代の男性が「現役時代に比べてそれほど食べなくなったし、着るものにも気を使いませんから、お金はかかりませんよ」といってきたことがあります。たしかに60代はまだまだ元気だし、孫にお金をかける余裕もあるでしょう。

 

ですが、70代、80代になったときはどうでしょうか? 人口減少で社会保障制度の問題が大きくなっていく日本では、将来の医療費負担がどれだけ大きくなるかはわかりません。人手不足などによる介護施設の利用料の値上がりや、そもそも入居できないリスクも考えられます。親の介護、配偶者の介護と介護が続いている家庭も増えています。介護期間もどれだけかかるかわかりません。

 

70代、80代になったときのことも想定して、定年前からマネープランを考えるようにしましょう。