「成功者の証」のイメージがあるタワーマンション。しかし、購入時には予想もしなかった「老後破綻」のリスクが高まっています。かつては盤石と思われた資金計画も、昨今の資材高騰や人件費の上昇により、根底から覆されるケースが相次いでいるのです。管理費や修繕積立金の急増は、年金生活を送る高齢世帯にとって死活問題となります。ある高齢夫婦のケースをみていきます。
「助けてくれ」タワマン隠居の72歳夫婦、修繕費倍増で破綻…45歳息子に送った〈衝撃メール〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

修繕積立金の不足は3割超…誰にでも起こりうる「マンション会計」の落とし穴

分譲マンション、特にタワーマンションにおける維持管理費の高騰は、全国的な課題となっています。

 

多くの新築マンションでは、分譲時の販売促進を優先し、修繕積立金を当初は低く設定する「段階増額積立方式」を採用しています。しかし、国土交通省『令和5年度マンション総合調査』によると、長期修繕計画に基づく修繕積立金の積立状況において、「計画に対して不足している」と回答した管理組合は36.6%。さらに不足の割合が20%を超えているのは11.7%です。

 

特に懸念されるのが、計画段階での見積もりが甘く、実際の修繕時期になって資金不足が露呈するケースです。近年は建築資材価格や労務費が高騰しており、過去に作成された計画通りの金額では、十分な工事が行えない事態が頻発しています。

 

資金が不足すれば、浅井さんのケースのように大幅な増額改定を行うか、あるいは一時金を徴収するしかありません。しかし、年金生活者などの高齢世帯にとって、急激な負担増は家計の破綻に直結します。

 

同調査では、管理費等の滞納が発生している管理組合は全体の約3割にのぼります。滞納が増えれば、必要なメンテナンスが行き届かず、建物の資産価値そのものが低下するという悪循環に陥ります。

 

「マンションは管理を買え」という格言がありますが、これは単に掃除が行き届いているかという意味にとどまりません。将来の修繕リスクを見据えた健全な会計運営がなされているか、自分たちの終の棲家としてコストを負担し続けられるか、購入時だけでなく居住中も常に厳しい目でチェックする必要があります。

 

[参考資料]

国土交通省『令和5年度マンション総合調査』