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高収入層ほど危ない?「生活水準のダウンサイジング」という難問
現役時代に高収入だった人であっても、老後に「貧困」へと転落するリスクを秘めています。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)』によると、70代の単身世帯において、金融資産をまったく保有していない(将来に備えた貯蓄ゼロ)世帯の割合は、26.7%にのぼります。およそ4人に1人が、余裕のない状態で老後生活を送っているという現実があります。
一方で、金融資産を保有している70代の平均保有額は2,104万円、中央値は1,100万円。「3,000万円以上」保有している層は、23.6%存在しており、老後の経済状況は極端な二極化が進んでいることがわかります。
なぜ、現役時代に十分な収入があったはずのエリート層が、貯蓄ゼロ側に転落してしまうのでしょうか。最大の要因は「生活水準のダウンサイジング(縮小)」の失敗です。
一度上がってしまった生活水準(消費水準)は、収入が下がっても簡単には下げられません。この現象を「ラチェット効果(歯止め効果)」と呼びます。
佐伯さんのように、「現役時代はこれくらいの服を着て、これくらいの店で食事をするのが当たり前だった」という感覚(プライド)が抜けないまま年金生活に突入すると、収支のバランスが崩壊します。現役時代の年収が高い人ほど、生活コストの固定費や交際費が高止まりしやすく、年金収入とのギャップに苦しむことになるのです。
「まだ貯蓄があるから大丈夫」「自分は稼ぐ力があるから何とかなる」という過信こそが、老後破綻への入り口になるのです。
[参考資料]
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)』