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「争族」は資産家だけの問題ではない
介護負担の偏りと相続への期待が絡み合い、親の入院や死をきっかけに親族間トラブルに発展するケースは後を絶ちません。「うちは資産5,000万円程度。大金持ちではないから揉めないだろう」と考えるのは危険です。
裁判所『令和5年 司法統計年報(家事事件編)』によると、遺産分割事件(調停・審判)のうち、認容・調停成立件数における遺産価額別の割合は以下のようになっています。
・1,000万円以下:32.4%
・5,000万円以下:44.1%
つまり、遺産分割で揉めているケースの約76%が、遺産額5,000万円以下の家庭なのです。むしろ資産が少ないほうが、不動産や預貯金の分け方で融通が利かず、争いが泥沼化しやすい傾向にあります。
また、由美さんのように「介護を頑張った分、多くもらいたい」という主張は、法律上の「寄与分」にあたります。しかし、単に「親の世話をした」というだけでは認められにくく、「無償で、継続的に、特別の寄与をした」という厳格な要件と証拠が必要。家庭裁判所で寄与分が認められるハードルは非常に高いのが現実です。
こうした悲劇を防ぐためにも、親は元気なうちに「遺言書」を作成しておくのが正攻法。「長女には介護の感謝としてXX円を多く残す」といった意思が明確に記されていれば、兄妹が無用な争いをすることは防げたかもしれません。
親の資産や介護について、家族全員が元気なうちに話し合っておくことが、何よりの「争族」対策となるのです。
[参考資料]
裁判所『令和5年 司法統計年報(家事事件編)』