夫の定年退職を機に、長年連れ添った夫婦の関係がギクシャクしてしまうことは珍しくありません。現役時代の感覚が抜けない夫と、自分の生活リズムがある妻。両者の溝はなぜ深まるのでしょうか。ある夫婦の衝突事例をみていきます。
なぜ当たり前のようにご飯が出てくると思ってるの…58歳・パート妻のひと言に、「退職金2,800万円」定年夫の反論、結婚33年夫婦の現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦円満の秘訣は「会話量」だけではない? データで見る定年後の現実

明治安田生命保険相互会社が公表した「いい夫婦の日」に関するアンケート調査によると、夫婦円満の秘訣として最も多かったのが「よく会話をする」(49.3%)。「夫婦仲が円満」と「夫婦仲が円満でない」の夫婦の会話時間には、平日で115分、休日で216分の差がありました。

 

▼平日の夫婦会話

・円満である…平均141分

・円満でない…平均26分

▼休日の夫婦の会話

・円満である…平均266分

・円満でない…平均50分

 

しかし、数字だけを見て安心するのは早計かもしれません。 ただ注意が必要なのは、会話の「質」と「距離感」です。定年を迎えた夫の多くは、現役時代の「仕事中心」の生活から「家庭中心」へと急激にシフトチェンジしようとします。田中さんの夫のように「妻との時間を楽しむこと」が善であると信じ込み、妻の都合を顧みずに距離を詰めようとするケースが後を絶ちません。

 

一方で、妻側は夫が不在の間に築き上げた独自のコミュニティや生活リズムを持っています。そこに夫が土足で踏み込み、さらに「家事は妻の役割」という古い価値観を維持したまま依存してくれば、妻にとって夫は「巨大なストレス源」でしかありません。

 

同調査で夫婦円満の秘訣として「よく会話をする」に続いたのが、「感謝の気持ちを伝える」(37.5%)、「干渉しすぎない」(29.6%)。60代夫婦に限ると、「よく会話をする」(44.1%)と「干渉しすぎない」(42.6%)と拮抗し、70代夫婦になると、その割合は逆転します。

 

定年後、共有する時間が増える夫婦にとって、「お互いが自立すること」が、どうやら夫婦円満の秘訣といえそうです。

 

「あのあと冷戦状態にありました。ほとんど話をしていません。ただ、そんな雰囲気に耐えきれなかったのか、はたまた心を入れ替えたのか、私がいないときや遅くなるときは、お昼は自分で用意するようになりました」

 

[参考資料]

明治安田生命保険相互会社『明治安田生命 「いい夫婦の日」に関するアンケート調査』