(※写真はイメージです/PIXTA)
「健康・生きがい」目的の就労が生むミスマッチ
佐藤さんのようなケースは、決して珍しいものではありません。シニア層の就労意欲は年々高まっていますが、そこには企業側との大きな意識の乖離が存在します。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、60歳以上の男女が仕事をしている、または仕事をしたいと思う理由として、「収入がほしいから」が55.1%で最多ですが、次いで「働くのは体によいから、老化を防ぐから(20.1%)」「自分の知識・能力を生かせるから(12.4%)」といった、健康維持や生きがいを重視する回答も多く見られます。
そんなシニアの就労事情。最近は地方移住と収入を両立させる選択肢として、シニアのリゾートバイトに注目が集まっています。
株式会社ダイブが50歳以上を対象に行ったリゾートバイトに関する調査によると、仕事を探す際、68.8%が「ハローワーク」を利用。そのほかさまざまな求人サイトを利用する人が多いほか、3.0%とわずかながら「リゾートバイト派遣会社」を活用するケースも見られます。
また実際にリゾートバイトを始めた理由としては、「新しい環境で経験やチャレンジをしたかった」が53.6%と最多でした。
さらに実際にリゾートバイトを始めてからどのような変化があったか尋ねたところ、「人間関係や交流が広がった」(45.1%)、「新しいスキルを取得した」(43.9%)、「ライフスタイルがアクティブになった」(33.8%)など、ポジティブな意見が並び、新天地で充実した日々を送っている(送った)ことがうかがえます。
そのようなリゾートバイトですが、一方で後悔の声も聞かれます。
「ブラック企業にあたり、劣悪な環境で働かされた」
「契約書には1日8時間労働と書かれていても、実際には10時間以上働かされた」
「シフトや休日も希望どおりにはならない」
「他人との距離が近いので衝突が起きやすく、寮内でのストレスも大きい」
何事もメリットがあれば、デメリットもあるものです。佐藤さんの場合も、事前に業務の細かな内容や生活環境を確認しておけば、イメージとのギャップはなかったかもしれません。採用担当者にしつこいほど確認することこそが、シニアの求職活動における最大のリスクヘッジになるといえるでしょう。
[参考資料]
内閣府『令和7年版高齢社会白書』