「家に入ることができない」という親からのSOS。単なるトラブルに見えても、その裏には思いがけない「兆候」が潜んでいることがあります。ある親子のケースをみていきます。
助けて!82歳母が「家に入れない」と大騒ぎ。実家に駆けつけた55歳長女が知る「まさかの事実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

65歳以上の「5人に1人」が認知症になる時代への備え

今回の事例のように、環境の変化が引き金となって認知症の症状が表面化することは珍しくありません。特に、リフォームや引越しといった住環境の変化は、高齢者にとって大きなストレスとなり、記憶の混乱を招くことがあります。

 

内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、日本の65歳以上の高齢者人口は3,623万人(令和5年10月1日現在)で、高齢化率は29.1%に達しています。 また、少し前のデータになりますが、内閣府『平成29年版高齢社会白書』における推計では、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人、およそ700万人前後が認知症になると予測されています。

 

「鍵が開かない」「物がなくなった」といったトラブルは、単なる老化現象や勘違いとして片付けられがちですが、認知機能の低下が隠れているかもしれません。田中さんの事例のように、「事実はあるのに、認識がズレている」という状況は、認知症の初期サインのひとつです。

 

親が元気なうちは「まだ先のこと」と考えがちですが、統計が示す通り、認知症は誰にでも起こりうる身近なリスク。今回のような小さなトラブルを「年のせい」にせず、専門の医療機関へ相談するきっかけと捉えることが重要です。

 

[参考資料]

内閣府平成29年版高齢社会白書』、『令和6年版高齢社会白書』

政府広報『知っておきたい認知症の基本』