離れて暮らしている高齢の親と子。たまの電話連絡で元気そうな親の様子に、安堵するという人も多いでしょう。しかし年月を重ねると見えてくるものも変わってきます。頼もしかった親に久しぶりに会うと、突然「親の老い」を感じて戸惑うことも珍しくありません。
1人が気楽よ…年金月10万円・強気な70歳母だったが、半年後、久しぶりの帰省で目の当たりにした異変に45歳娘、耐えきれず号泣 (※写真はイメージです/PIXTA)

「大丈夫」の裏に隠された真意を汲み取る重要性

親が遠方で1人暮らしをしている場合、子に心配をかけたくないという親心から、体調や生活の変化を隠そうとします。特に「認知症」や「老い」といった、自分の尊厳に関わる問題は、強い恐怖や不安となって表れ、それを隠すために、かえって強気な態度や「大丈夫」という言葉を繰り返してしまうことがあります。

内閣府『令和元年 高齢者の日常生活に関する意識調査』によると、「将来、認知症になることへの不安」を感じている高齢者は約8割に上ります。高齢者は、自分の変化を誰にも知られず、自立した生活を維持したいという強い願いを持っていることがわかります。

親が「大丈夫」と言い張るとき、子どもがその言葉を鵜呑みにせず、変化に気づくことが極めて重要です。親の本当の状況を把握するためには、言葉ではなく、「生活レベルの変化」に注目する必要があります。

家事能力の低下:以前は清潔だった家が散らかっている、ゴミが溜まっている、冷蔵庫の中の管理ができていないなど、生活の「質」が低下していないか。

同じ話の繰り返し:直前の出来事や、会話の内容をすぐに忘れる、または何度も繰り返すといった、記憶力の低下が見られないか。

活動性の変化:楽しみにしていた趣味や近所付き合いが減り、外出を控えるなど、意欲の低下や引きこもり傾向が見られないか。

これらの変化は、親が抱える「寂しさ」や「体の不調」だけでなく、「認知症」への不安や初期の兆候である可能性もあります。遠方に住んでいても、短い帰省の機会や、週に一度のビデオ通話などで、意識的に「家の様子」や「親の表情」といった言葉以外の情報に目を向けることが、親の抱える恐怖を和らげ、「気づき」を与える最初の一歩となります。

[参考資料]

内閣府『令和元年 高齢者の日常生活に関する意識調査』

政府広報ライン『知っておきたい認知症の基本』