高騰し続ける都心の不動産価格。特に都心部の「タワーマンション」は億越えが当たり前となりました。かつては高嶺の花だったこれらの物件も、共働きで高収入を得るパワーカップルたちが、ペアローンという武器を使って購入に踏み切るケースが増えています。夫単独では手が届かなくとも、夫婦の年収を合算すれば、銀行から巨額の融資を引き出せるからです。しかし、このペアローンには致命的なリスクが潜んでいます。それは「離婚したくても、別れられない」という事態に陥ること。銀行にとって夫婦の不仲は関係ありません。「離婚するからローンをチャラに」などという理屈は通用せず、どちらかが家を出ても、連帯保証人としての責任は残り続けます。
「別れたくても別れられない」世帯年収2,000万円・30代夫婦…〈思い出の汚れたタワマン〉で、35年間〈仮面夫婦〉でいることを決めたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

輝かしい未来を信じた「1億円超の買い物」

夫のエイタさん(33歳)は大手総合商社勤務で年収1,100万円、妻のスズカさん(35歳)は外資系IT企業勤務で年収900万円という、いわゆるパワーカップルです。

 

2人が新居に選んだのは、都内湾岸エリアにそびえ立つ1億円超のタワマン。頭金として互いの独身時代の貯金から500万円ずつ拠出し、残りはペアローン(変動金利・35年返済)を組みました。

 

入居直後にスズカさんの妊娠が判明。「これから生まれてくる子に最高の環境を」「2人で繰上げ返済すれば余裕だね」眼下に広がる東京の夜景をみながら、2人は輝かしい未来を信じて疑いませんでした。

産後の亀裂、そして「裏切り」

しかし、長男誕生からわずか3ヶ月後、その絆は崩壊します。

 

激務の商社マンであるエイタさんは、「俺が稼ぐから」と家事育児をスズカさんに丸投げ。一方でスズカさんは、産後の不調と慣れない育児、そして早期の職場復帰へのプレッシャーで心身ともに限界を迎えていました。

 

「少しは手伝ってよ。あなたの子どもでもあるのよ」「俺だって付き合いがあるんだ」

 

深夜に帰宅するエイタさんと、寝不足で叫ぶスズカさん。罵り合いが絶えないある日、決定的な出来事が起きます。エイタさんのスマホに、見知らぬ女性からのメッセージが届いたのです。

 

『昨日は楽しかったね。奥さん、まだ里帰り中? 今度またお邪魔するね』

 

それは、スズカさんが里帰り出産をしていた時期の、マッチングアプリでの浮気でした。問い詰められたエイタさんは、悪びれる様子もなく言い放ちます。

 

「子どもにかかりきりで、俺をないがしろにするからだ」

 

その瞬間、スズカさんのなかでなにかが壊れました。愛の結晶だったタワマンは、一瞬にして「夫が浮気相手と逢瀬をしていた現場」へと変わったのです。