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信頼ある組織を語る悪質な営業…なぜ高齢者は騙されるのか?
独立行政法人国民生活センター『2024年度 65歳以上の消費生活相談の状況』によると、契約当事者が65歳以上の相談件数は2024年度30万4,130件。前年から2万6,500件増加となり、相談全体に占める契約当事者が65歳以上の相談の割合も38.6%となり、2020年度以降で最高となりました。
その内容をみていくと、「インターネット接続回線(光回線等)」は7,604件と、全体で6番目に多い相談。ほか、「移動通信サービス」に関連する相談は9,083件で第5位と、通信に関する相談は多く、特にインターネット回線や電力・ガスの自由化に伴い、「NTT」「電力会社」など、既存の信頼できる組織名をかたったり、関連会社を装ったりする悪質な勧誘や契約トラブルは多数寄せられています。
良雄さんのように、「自分はしっかりしている」「騙されるはずがない」と思っている人ほど、心理的な落とし穴に陥りやすい傾向があります。
・「親切に説明してくれた」相手を無下に断ることに罪悪感を覚える。
・「安くなる」「お得になる」という言葉に、冷静な判断ができなくなる。
・自分の理解力を過信し、契約書の詳細を確認しない。
こうした心理が、相手に付け入る隙を与えてしまいます。では、離れて暮らす親が被害に遭わないために、何ができるでしょうか。
まず、親の契約に違和感を覚えたら、すぐに契約書面を確認。訪問販売や電話勧誘販売、そして電気通信サービス(光回線など)には、一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度(クーリング・オフや初期契約解除制度)が定められています。迷ったら、すぐに最寄りの消費生活センター(電話番号188)に相談することが重要です。
また被害を未然に防ぐためには、日頃からのコミュニケーションとルールの設定が不可欠。「お金」や「契約」に関する電話は、その場で即決しない。 「安くなる」「今だけ」と言われても、「家族に相談してから決める」と言って、必ず一度電話を切るように徹底します。さらに 「NTT」や「市役所」を名乗られても、一度電話を切り、こちらから公式な電話番号(電話帳や過去の請求書に記載されている番号)にかけ直す習慣をつけます。
そして万が一、親が不審な契約をしてしまっても、「なぜ騙されたんだ」と責めるのは逆効果。良雄さんのように自信を失い、次のトラブルを隠してしまう可能性があります。「相談してくれてありがとう」と伝え、一緒に解決策を探る姿勢が、次の被害を防ぐことになります。
「幸い、今回は被害を未然に防ぐことができた。私にも「父は元教師だから」という過信がありました。『年寄り扱いするな』などと、反発されるかもしれませんが、これからは、もっと気にかけていきたいと思います」
[参考資料]
独立行政法人国民生活センター『2024年度 65歳以上の消費生活相談の状況』