かつては地域社会が担っていた「子どもの見守り」機能が、経済構造の変化とともに崩壊しました。親は忙しく、近所の繋がりもない。頼れる大人がいない中で、子どもたちはネット空間に居場所を求め、そこで新たなトラブルや孤立に直面します。本記事では齊藤万比古氏(児童精神科医)監修の書籍『不登校・登校しぶりの子が親に知ってほしいこと: 思春期の心のメカニズムと寄り添い方』(大和出版)より、現代の不登校の原因について解説していきます。
学校には行けないけれど、家では元気そうにみえる…近年、「不登校」が増え続ける本当の原因 (※写真はイメージです/PIXTA)

思春期の子が抱えやすい3つの問題

1.心理的な悩み

〇イライラ感

情緒不安定でイライラしやすい。感情を自分でコントロールできなくなり、横暴な振る舞いをしてしまう。

 

〇友人関係

友人関係が複雑化。LINE、SNSなどを使ったコミュニケーションの難しさからトラブルが起こりやすい。

 

〇いじめ

思春期は同世代との調和や連帯を強く求める。同調圧力や排除が過激化するといじめに発展することも。

 

〇成長への戸惑い

第二次性徴を迎え、身体的な変化が生じる。性的な自認がはっきりするのもこの時期。情緒不安定に。

 

〇人生への不安

感性が豊かになり人生の意味を問い、自立への不安も強くネガティブ思考に。慢性的に抑うつ状態になることも。

 

〇大人への反発

親の価値観や大人にレッテルばりされた自分像から解き放たれたくて反発。自分らしさを求める。

 

〇進路への不安

将来への漠然とした不安や、受験、進路の悩みから、自己否定的になり、思い悩み、希望を失いやすい。

 

〇勉強・成績へのプレッシャー
学力や進学に対する親の期待が強い家庭ほど、子は親の理想像からズレる自分を許せず、負担に感じる。

 

〇校則・システムへの疑問

親や大人の価値観から自由になりたいがために、校則や制度の理不尽さに反発心を覚える。

 

〇過敏さによる劣等感

親がつくり上げたよい子像が崩れ、子本来の姿があらわれる。身長や体重、容姿に過敏となり、劣等感を抱きがち。

 

〇長期休み明けの不安

長期休みに改めて学校生活を振り返り、学校に行くのが怖くなる。また昼夜逆転により生活リズムが崩れる。

 

〇金銭トラブル

交友範囲、遊びの範囲が広がる。小遣いでは足りず、金銭トラブルに発展しやすい。経済格差も影響。

 

〇運動能力や身体能力の差

身体能力の個人差が大きくなる。運動の得意・不得意などもはっきりしてくるため、コンプレックスも。

 

〇ほしい物への葛藤

経済格差や家庭の方針から、ほしいものが手に入らないもどかしさを感じる。ネットによる誘惑も大きい。

 

〇孤独感

本音を話せる相手を見つけられず孤独感を覚えやすい。SNS上のつき合いは孤立を見えづらくするぶん危険も大きい。

 

〇恋愛

異性への興味、性的関心が高まり、羞恥心も強くなる。恋愛対象となる相手の態度や言葉が影響を与える。

 

2.身体的な不調に過敏

頭痛や腹痛、だるさ、胃の不快感などのが起こりやすい。起立性調節障害や自律神経の乱れが背景にあることも少なくない。検査で大きな異常が見つからなくても、症状は存在し、登校に影響する。「怠け」ではなく、心身の負荷を知らせるSOS。

 

3.社会的な背景

成功や幸せの形が多様化する一方で、依然として画一的な価値観の圧力も強く、そのはざまで揺れがち。また、地域のつながりや家庭内外の支えが弱まり、孤立化しやすい。親、とくに母親が非常に多忙な時代になっている。

 

 

齊藤 万比古

恩賜財団母子愛育会

愛育研究所顧問