離れて暮らす親の「大丈夫」という言葉。それをどこまで信じていますか? 子どもに心配をかけたくないという親心は、時に深刻な問題の兆候を覆い隠してしまうことも。高齢化社会において、親が発する日々の小さな「違和感」は、見過ごしてはならない重要なサインかもしれません。
午後4時 「もう、食べたよ」…年金月10万円・82歳母の返事に違和感。実家の冷蔵庫を開けた58歳娘が〈絶句した光景〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親…「食べている」の言葉を鵜呑みにしてはいけない

高齢になると、身体機能の低下や食欲の減退、あるいは芳子さんのように認知機能の変化によって、食生活が乱れやすくなります。

 

厚生労働省『令和5年 国民健康・栄養調査』によれば、65歳以上の高齢者のうち低栄養傾向(BMI≦20kg/m2)にある人の割合は、男性で12.2%、女性で22.4%にのぼります。特に85歳以上になると、その割合はさらに高くなります。

 

日中や、あるいは日常的に親がひとりで過ごしている場合、そのリスクはさらに高まります。2015年調査と、少々古いものになりますが、日本能率協会総合研究所が行った『食生活と食意識に関する調査』では、1人暮らしの高齢者が「栄養バランスが欠如している」と感じている割合は、家族と同居している高齢者の実に3倍に達するという結果が出ています。また、1人暮らしの高齢者の35%が「同じようなメニューの食事が続くことがよくある」と回答しており、これは家族同居の場合の2倍以上の数値です。

 

親が「大丈夫」「食べている」と答える背景には、「子どもに心配をかけたくない」という心理や、「自分はまだ1人でできる」というプライドが隠れていることもあるでしょう。また、認知機能の低下によって、食事をしたこと自体を忘れていたり、食べた「つもり」になっていたりするケースもあります。

 

親の健康を守る第一歩は小さな「違和感」を見逃さないことです。電話で「何を食べたか」を具体的に聞いてみる。そして、訪問した際には必ず冷蔵庫の中身を確認することも有効です。冷蔵庫に食品が腐敗するほど食材が溜まるのは、認知症の症状である「同じものを何度も買ってしまう」「買うこと自体が目的になる」といった認知症のサインかもしれません。

 

「過剰に反応すると逆効果かなと思ったので、何事もなかったようにこっそり片付けて。そのあと、一緒に専門医に相談しに行ったら、やはり、認知症の初期症状と。あのとき、冷蔵庫を開けておいて、本当によかったです」

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年 国民健康・栄養調査』

日本能率協会総合研究所『60歳~79歳の男女に聞く「食生活と食意識に関する調査」』