(※写真はイメージです/PIXTA)
介護は「誰かひとりで頑張る」と破綻する
厚生労働省『雇用動向調査』によると、2023年に「介護・看護」を理由に仕事を辞めた人は約7.3万人。そのうち女性が77%(修正点)を占め、介護負担に格差があることがわかります。また年代別にみると、50代が最も多くなっています。
【介護・看護を理由とした離職者】
19歳以下:0.2千人
20代:6.0千人
30代:6.9千人
40代:8.8千人
50代前半:20.8千人
50代後半:13.5千人
60代前半:10.1千人
65歳以上:6.9千人
由美さんのような40代、50代の働き盛りの女性が、仕事と介護の両立に悩み、結果として経済的困窮やキャリアの断絶に追い込まれるケースが後を絶ちません。
このような事態に陥らないためのポイントは大きく2つ。
まずは「介護はひとりだけで抱え込まないこと」。 介護が始まったとき、多くの人が「家族(自分)が面倒を見るべきだ」と考えがちです。しかし、介護は専門的な知識と体力、そして何より「終わりが見えない」という精神的負担を伴います。
介護保険サービスは、要介護者のためだけではなく、介護する家族の負担を軽減するためにも存在します。ケアマネジャーや地域包括支援センターは、家族の状況も含めてケアプランを作成する専門家です。
「お金がかかるから」「他人に任せるのは不安」といった理由で利用をためらうことが、結果として共倒れを招きます。現状を包み隠さず相談し、利用できるサービスは最大限利用することが、介護を継続させるためのポイントになります。
もうひとつが、「役割と費用負担を明確にすること」。 「長男だから」「独身だから」「近くに住んでいるから」。こうした曖昧な役割期待が、介護負担の偏りを生み、家族間に深刻な不和をもたらします。
親が元気なうち、あるいは介護が必要になった初期段階で、必ず家族全員で「誰が(どの程度)物理的なケアを担うのか」、「費用負担の割合はどうするのか」、「介護サービスをどこまで利用するのか」、「将来的に施設入所も検討するのか」など、具体的に話し合うべきなのです。
親の介護は、いつか必ず訪れる問題。「家族崩壊」という最悪のシナリオを避けるためには、公的サポートを賢く利用し、家族全員で自分ごととして課題に向き合う姿勢が不可欠です。
「母と大喧嘩したあと、兄のところにいきました。そこでも私は号泣してしまって、話にならなかったです。でもそれでやっと兄も状況がわかってきたようで……少しは母の介護に目を向けてくれるようになりました」
[参考資料]
厚生労働省『雇用動向調査』