大切な家族を失った悲しみのなか、決めなければならない葬儀。しかし、その費用をめぐるトラブルは後を絶ちません。広告の「格安プラン」と、実際の請求額の間に、なぜ大きな差が生まれるのでしょうか。ある男性のケースをみていきます。
聞いていた金額と全然違う…父の葬儀で届いた「想定外の請求書」。〈月収37万円〉46歳長男が絶句した「オプション地獄」の全貌 (※写真はイメージです/PIXTA)

なぜ葬儀費用は「わかりにくい」のか

山田さんのように、想定以上の葬儀費用に驚くケースは少なくありません。なぜ、葬儀費用は当初の見積もりと大きく乖離することがあるのでしょうか。背景にあるのが、葬儀費用の複雑な構成です。

 

株式会社鎌倉新書が実施した『第6回お葬式に関する全国調査(2024年)』によると、葬儀費用の総額(飲食・返礼品費用、お布施は除く)の平均は118.5万円。また葬儀の種類別の金額は、一般葬161.3万円、家族葬105.7万円、一日葬87.5万円、直葬42.8万円となっています。

 

しかし、多くの葬儀社が広告で打ち出す「基本プラン」や「XX万円パック」には、この平均額に含まれる費用のすべてが含まれているわけではありません。多くの場合、基本プランに含まれるのは「祭壇」「棺」「霊柩車」「式場使用料」など、葬儀を行うための最低限の項目のみです。

 

一方で、山田さんのケースのように、実際には以下の費用が追加で必要になることが一般的です。

 

【葬儀プランに含まれていないことが多い葬儀費用】

・飲食費:通夜振る舞いや告別式後の食事

・返礼品費:会葬者へのお礼の品

・オプション費用:祭壇や棺のグレードアップ、遺影写真、湯灌、マイクロバスなど

 

特に「オプション」とされる部分は、葬儀の場において「故人のために」という心理が働きやすく、また「相場がわからない」ために、葬儀社の提案通りになりがちな領域です。

 

同調査でも、葬儀社を決定した理由として「費用が明瞭だった」が上位にある一方、葬儀を経験した人の不満点として「追加費用がかかった」「見積もりが不透明だった」という声も根強く存在します。

 

葬儀は、短時間で多くのことを決定しなければなりません。しかし、後悔しないためにも、広告の「最安値」だけを見るのではなく、見積もりに「何が含まれ、何が含まれていないのか」を冷静に確認する視点が不可欠です。

 

可能であれば、事前に複数の葬儀社から詳細な見積りを取り、総額でいくらかかるのかを把握しておくことが、想定外の請求を防ぐ方法といえるでしょう。

 

[参考資料]

株式会社鎌倉新書『第6回お葬式に関する全国調査(2024年)』