大切な家族を失った悲しみのなか、決めなければならない葬儀。しかし、その費用をめぐるトラブルは後を絶ちません。広告の「格安プラン」と、実際の請求額の間に、なぜ大きな差が生まれるのでしょうか。ある男性のケースをみていきます。
聞いていた金額と全然違う…父の葬儀で届いた「想定外の請求書」。〈月収37万円〉46歳長男が絶句した「オプション地獄」の全貌 (※写真はイメージです/PIXTA)

止まらない追加提案「皆様、これを選ばれます」

「父が亡くなったのは、本当に突然のことで。心の準備も、お金の準備もできていませんでした」

 

山田健一さん(46歳・仮名)。父親の正蔵さん(享年78・仮名)を、急性心筋梗塞で亡くしました。山田さん自身の月収は37万円ほどだといい、葬儀にあたり、やはり気になったのは費用のことでした。

 

「病院から紹介された葬儀社もありましたが、まずはネットで『葬儀 安い』と検索しました。そこで見つけたのが、基本プラン20万円台という葬儀社だったんです」

 

長男である山田さん。父の葬儀については、自分が率先して何でもしなければ、という思いもあったといいます。すぐに連絡を取り、病院から安置場所へ搬送。その後、葬儀場で打ち合わせが始まりました。

 

提示されたのは、広告通り「基本プラン20万円」の見積書でした。この時点では、山田さんも安堵していたといいます。しかし、打ち合わせが進むにつれ、状況は一変します。

 

「担当者から『基本プランの祭壇はこちらになります』と見せられた写真が、想像以上に簡素で。すると『親戚の方もいらっしゃいますし、皆様こちらの30万円のプランアップを選ばれます』と提案されました」

 

「皆様が選ぶ」という言葉に、山田さんは「じゃあ、それで……」と応じてしまいます。話は祭壇だけでは終わりませんでした。

 

「棺も『基本のものは燃えにくい素材です』と言われ、グレードアップを勧められました。湯灌(ゆかん)も『故人様のために、綺麗にして差し上げては』と。返礼品も『この地域ではこの価格帯が一般的です』、料理も『通夜振る舞いと告別式の食事で、お一人様あたり……』と、次から次へと提案が続きました」

 

故人を偲ぶ場で、費用を気にする姿を見せたくない。父親のために「ケチった」と思われたくない。そんな心理が働き、山田さんは多くの提案を受け入れざるを得なかったと振り返ります。

 

「冷静に考えれば不要だったものもあったかもしれません。でも、父を亡くした直後、『ちゃんとした葬儀にしなければ』という思いのなか、葬儀社の『これが普通です』という言葉を受け入れるしかありませんでした」

 

葬儀は滞りなく終わりました。しかし、数日後に届いた請求書を見て、山田さんは言葉を失います。

 

「請求額は、最初の見積もりの20万円とはかけ離れた、約120万円でした。オプションの積み重ねで、最終的に100万円も高くなっていたんです……」