首都圏を中心に過熱する中学受験は、多くの家庭にとって一大イベントです。その成否を分ける最初の重要な選択が「塾選び」といえるでしょう。保護者は何を基準に塾を選び、通わせた結果、何に満足するのでしょうか。多くの家庭が見落としがちな、塾選びの「入口」と「出口」のギャップとは?
ウチの子だけ落ちた…中学受験に必死だった〈40歳専業主婦〉が涙。ママ友の子は続々合格も、全落ちの悲惨、塾選び失敗の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

まさか「全落ち」…我が子だけが、どこにも行けない

「あんなに頑張ってきたのに、まさか、ウチの子だけが、どこにも行くところがないなんて思ってもみませんでした」

 

都内で夫(42歳)と長男(13歳)と3人で暮らす、伊藤淳子さん(40歳・仮名)。今年の2月、長男は中学受験に挑戦をしました。元々、教育熱が高い地域。長男が小学校に入学したころから、周囲のママ友たちの間で中学受験の話題が出るたび、漠然とした不安と期待を抱いていました。本格的に塾通いを始めたのは、長男が4年生になるタイミング。「やるからには、しっかりとしたところへ」と考えた淳子さんは、いくつかの塾の説明会に参加し、最終的に選んだのは、駅前にある大手進学塾でした。

 

「最初は、もっと小規模で面倒見の良い塾も検討したんです。でも、A塾の説明会で『ウチはこれだけの実績があります。このカリキュラムについてくれば大丈夫です』という先生の力強い言葉を聞いて、やはり大手のほうが安心だと思ってしまいました」

 

しかし、期待とは裏腹に、長男の成績は思うように伸びません。大人数のクラスのなかで分からないところを質問するタイミングを逃しがちな長男の性格を、淳子さんは心配していました。6年生になり、志望校を決める面談の際も、淳子さんは不安を口にしました。「本当にこのままで大丈夫でしょうか」。しかし、塾の担当者は「大丈夫です。最後まで頑張りましょう」と繰り返すばかり。その「大丈夫」という言葉を、淳子さんは信じるしかありませんでした。

 

そして迎えた受験本番。結果は、残酷なものでした。第一志望はもちろん、実力相応校、そして滑り止めと位置づけていた学校まで、すべて不合格。「全落ち」という現実でした。

 

「SNSを開けば、ママ友の子どもたちの『サクラ咲ク』という投稿が次々と目に入りました。合格した学校の名前が飛び交うなかで、ウチの子だけが落ちた。あの時の絶望感は、言葉になりません」

 

淳子さんは今、塾選びを後悔しています。「先生の『大丈夫』という言葉を鵜呑みにしてしまいました。大手塾の『実績』は、もともと優秀な子たちが稼ぎ出したものも含まれている。息子の性格や、つまずいている部分に、どれだけ向き合ってくれていたのか。もっと早く、息子の特性に合った塾に切り替える勇があれば……」