(※写真はイメージです/PIXTA)
「不当な値上げ」に法的な対抗策は?
美紀さん母娘が直面した家賃の高騰は、決して他人事ではありません。実際に、都内の募集家賃は上昇を続けています。
アットホーム株式会社が発表した『全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2025年9月)』によると、東京23区のファミリー向きマンションの平均募集家賃は、2015年1月の調査開始以来の最高値を更新しました。美紀さんたちが探し直した際に直面した「募集家賃の高さ」は、統計にも表れています。
【2025年9月平均募集家賃】
■30~50平米(カップル向き)
・東京23区:17万0,337円
・東京都下:9万2,532円
■50~70平米(ファミリー向き)
・東京23区:24万8,032円
・東京都下:13万3,082円
■70平米超(大型ファミリー向き)
・東京23区:39万2,976円
・東京都下:19万2,479円
では、現在の住まいについて、美紀さんの事例のような一方的な「5万円アップ」の通知を受け入れるしかないのでしょうか。
法律(借地借家法)上、オーナー(貸主)が家賃の増額を請求するには、固定資産税の増加や、近隣の同種物件の家賃相場との著しい乖離など、正当な理由が必要です。通知書が届いたからといって、借主が自動的に同意しなければならないわけではありません。
まず取るべき行動は、管理会社やオーナーとの「交渉」です。値上げの具体的な根拠を問い、現在の収入状況などを説明した上で、値上げ幅の減額や、値上げ時期の猶予を求めることができます。
もし交渉が決裂し、オーナー側が一方的に「値上げ後の家賃を支払わなければ契約解除だ」と主張しても、すぐに退去させられるわけではありません。借主は、自分が「相当と認める額」(通常は従来通りの家賃)を支払い続ける(法務局に供託する手続きもあります)ことで、住み続ける権利が保護されます。
最終的には、簡易裁判所での「民事調停」や「訴訟」で、妥当な家賃を決定することになります。
ただし、これらの法的手段には時間と労力がかかります。そして何より、今回の美紀さんの事例のように、「近隣相場が実際に高騰している」場合、借主側の交渉は非常に難航するのが現実です。
「家賃の安いところに引っ越すことも考えました。でも、子どもたちを転校させるのは……せめて下の子が高校生になるまでは、頑張るしかないと思っています」
[参考資料]