​高齢の親が離れて暮らしていると、生活費の支援や日々の健康状態など、気になることは多いものです。子どもとしては「できる限りの援助をしたい」と考える一方、親は「子どもに迷惑はかけたくない」と強く願っているケースも少なくありません。
もう仕送りはいらないよ…〈年金月7万円〉78歳母の電話。〈月5万円〉を送り続けた52歳息子が急遽、帰省でみた「想定外の光景」 (※写真はイメージです/PIXTA)

子の「支援」と親の「終活」

浩一さんのように、離れて暮らす親の生活を案じ、経済的な支援を続ける子ども世代は少なくありません。 一方で、ハルさんのように「子どもに迷惑をかけたくない」と考える親世代もまた、非常に多いのが実情です。

 

厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、これに18歳未満の未婚の者が加わった世帯)の平均所得金額は314.8万円であり、そのうち公的年金・恩給が総所得に占める割合は63.5%となっています。 ハルさんのように、年金収入が中心の高齢者にとって、子どもからの仕送りが生活の支えとなるケースは確かに存在します。

 

一方、内閣府『高齢者の健康に関する調査』によると、「排せつ等の介護が必要な状態になった時、誰に介護を頼みたいか」の問いに対して、最も多かったのが「ヘルパーなど介護サービスの人」(46.8%)。 「配偶者」(30.6%)が続き、「子」は12.9%と少数派。 できれば「子」には迷惑をかけたくない――そう考えている親が大多数のようです。

 

ハルさんが行った「終活」も、そうした親心の表れでしょう。 近年、「終活」は、自身の死後に備えて身辺整理や財産管理、葬儀や墓の準備を行うこととして広く認知されています。 ハルさんの場合、終活を進めるなかで「もう子どもを頼るわけにはいかない」という結論に至ったのでしょう。

 

浩一さんは、母の電話で違和感を覚え、帰省するという行動を取り、それによって母の真意と覚悟を知ることができました。 金銭的な支援もさることながら、親が今何を考え、将来にどう備えようとしているのか、元気なうちから「対話」を重ねておくこと。 それが、いざという時のすれ違いや後悔を防ぎ、親子の双方にとって最善の選択を見つける鍵となるのかもしれません。

 

[参考資料]

厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』

内閣府『高齢者の健康に関する調査』