(※写真はイメージです/PIXTA)
「親への仕送り」の実態と、厳しさ増す高齢者の暮らし
美咲さんのように、親へ仕送りをしている人はどのくらいいるのでしょうか。厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』によると、「別居の親へ仕送りしている」世帯は、全世帯のうちわずか2.3%。しかし、仕送りをしている世帯に限定すると、その平均月額は約5万6,000円となっており、美咲さんが送っていた「月5万円」は、決して少ない額ではありません。また、仕送りをしている世帯主の年齢で最も多いのが50〜59歳(同調査)であり、53歳の美咲さんは、まさに「親を支える」中心世代だといえるでしょう。
一方、高齢者の暮らしは厳しさを増しています。年金の支給額は、物価と名目賃金の変動に応じて改定されますが、令和7年度は賃上げの流れを受けて前年度より1.9%増加。しかし将来の給付水準を確保するための「マクロ経済スライド」と呼ばれる措置により、引き上げ幅が賃金の上昇率よりは低く抑えられているため、実質的に目減り。年金だけが頼りという高齢者は多く、生活苦に直面しているケースも多いのです。
そのような状況のなか、美咲さんは雅恵さんの暮らしを気遣い、30年もの間仕送りを続けてきました。しかし、その仕送りはそのまま直紀さんに渡っていたかもしれない……美咲さんが怒るのも無理はありません。
そのあとわかったのは、雅恵さんの年金は月10万円ほど。何とか、このなかで生活しようと節制はしているものの、祖父母(雅恵さんの両親)の遺産や亡父(雅恵さんの夫)の保険金なども十分残っていて、不安感は想像ほど大きくないということ。
「母は何度も何度も謝っていました。きちんと母の状況がわかっていない私も悪かった。とにかく、弟にはもう少しちゃんとしてもらえるよう、私から厳しく言うようにしました」
[参考資料]
。厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』