定年再雇用による急激な収入減。これは単に経済的な問題だけにとどまりません。それまで稼ぎによって保たれていた家庭内のバランスが崩れたとき、新たな課題が浮き彫りになります。
愚かでした…月収75万円・60歳管理職、「定年再雇用」で手取り22万円に激減。共働き妻から浴びせられた「キツイひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

月収75万円のプライドと、手取り22万円の現実

「自分が大黒柱として、家族を支えてきた自負がありました」

 

田中一郎さん(60歳・仮名)。都内の中堅メーカーで長年勤め上げ、50代後半は管理職として部下を束ねてきました。定年を迎える前、直近の月収は75万円。そして定年とともに2,800万円の退職金を受け取ったといいます。

 

「2歳年下の妻も、ずっと正社員で働いていますが、管理職でもありませんし、私の収入には及ばない。家計の主導権は私にある、そう思っていました」

 

そんな一郎さんに転機が訪れたのは、会社から「定年再雇用」の打診があり、一郎さんは迷わず選択したときから始まっていました。役職は外れ、契約社員になる。所属はそれまでいた部署で、現役社員の後方支援にまわる。それが定年以降に会社から期待された役割だったといいます。

 

「役職は外れますが、これまで培ってきたものを活かせるなら……ただそれだけでした」

 

契約社員になったことで、就業時間はきっかり9時~17時。残業は基本的にNG。実際に与えられる仕事は、書類整理に、現場社員の(雑務の)フォロー。たまに「(元)部長の意見を聞きたくて」と話しかけられ、アドバイスをする程度。少々物足りなさを感じましたが、「契約社員なのだから仕方がない」と、言い聞かせていました。

 

一方で、定年以降の給与の減少には、驚いたそうです。

 

「前もって給与額は提示されていますが、実際に振込額をみるとインパクトが違います。こんな額、新卒以来ですから」

 

額面で28万円。色々と天引きされて22万円。「正直、キツイなぁと思いました」と、一郎さん。これまで築き上げてきたプライドを、ちょっと傷つけられる感覚があったといいます。しかし、それは序の口でした。