今や世界を動かす「かわいい」という感性。しかし文化的背景が近い日中韓でも、その反応は大きく異なるようです。ある調査で、日本は「眺めたい」、韓国は「所有したい」、中国は「共有したい」という決定的な差が明らかに。この感性の違いは、3.9兆円ともいわれる「推し活」市場の熱量の差にも直結していました。
本家の日本は「眺めるだけ」の謎…最新調査で判明した、日中韓「かわいいの感性」決定的違い (※写真はイメージです/PIXTA)

3.9兆円市場を動かす「推し活」の熱量差

「かわいい」への反応の違いは、より能動的な消費行動であり、現代の「かわいい」経済を牽引する「推し活」の実態にも表れています。この「推し活」が形成する市場は巨大で、株式会社A3が行った調査では、その市場規模は年間約3.9兆円に上るとも推計されています。

 

この巨大な消費行動について、今回のフリューの調査は、日中韓の熱量の差を明らかにしました。「直近1年の推し活経験」について尋ねたところ、調査では中国が74.0%と最も高く、次いで韓国が72.0%、日本は60.0%という結果でした。経験率において、日本は他2国に10ポイント以上の差をつけられています。

 

さらに注目すべきは、推し活を経験した人の「満足度」です。中国では「満足している」(「非常に満足」と「やや満足」の合計)と回答した人が100%に達しました。韓国も97.2%と高い水準です。対して日本は90.0%と、高い水準ではあるものの、3ヵ国のなかでは最も低くなっています。「非常に満足している」という強い肯定を示す回答の割合も、中国が最も高い結果でした。

 

前述の「かわいい」への印象に関する調査(複数回答の総回答数)や、この推し活の調査結果において、いずれも日本の数値が3ヵ国中で最も低かった点について、調査元は日本は「“かわいい”の判断」や「“かわいい”に対する活動」全般において、中国・韓国に比べて「やや消極的」な傾向があるのではないか、と分析しています。

1位は各国で分散、「ちいかわ」「ナタ」「クレヨンしんちゃん」

では、具体的にどのような対象が「かわいい」と認識されているのでしょうか。「“かわいい”と思うキャラクターランキング」では、3ヶ国に共通する傾向と、それぞれの国の好みが明確に分かれました。

 

調査結果によれば、共通して人気が高いのはサンリオキャラクターで、各国で上位群にランクインしています。また、「ちいかわ」関連キャラクターや「ドラえもん」、「ピカチュウ」なども3ヵ国共通で名前が挙がりました。これらのキャラクターは、国境を越えて「かわいい」と認識される普遍性を持っているようです。

 

しかし、各国の1位はそれぞれ異なる結果となりました。

 

日本で1位となったのは、現在、社会現象的な人気を博している「ちいかわ」です。 中国の1位は「ナタ」でした。これは、中国のアニメ映画として世界興行収入歴代1位(リリース文ママ)の記録を持つ「ナタ 魔童の大暴れ(哪吒之魔童降世)」の主人公であり、強いローカル人気を反映しています。 そして韓国の1位は「クレヨンしんちゃん」でした。日本では長寿アニメとしての地位を確立していますが、韓国では特に若年層からの「かわいい」という支持を集めていることがうかがえます。

 

今回の調査は、「Kawaii」というひとつの言葉で語られがちな感性が、国や文化によってその内実は大きく異なることを示唆しています。

 

日本は対象と距離を置いて「眺める」受動的なかわいさの享受、韓国は「手に入れたい」という所有欲を伴う能動的な関与、中国は「気分を高揚させ、共有する」という感情的な体験を重視する――キャラクタービジネスやコンテンツ展開において、アジア市場をひとくくりに「かわいい」が通じる市場として捉えるのではなく、各国が「かわいい」に何を求め、どう反応するのかを深く理解し、ローカライズしていくことの重要性が改めて示されたといえるでしょう。

 

[参考資料]

フリュー株式会社『フリュー調査レポート:かわいい国際調査!日本・中国・韓国の“かわいい”の捉え方を調査/かわいいに対して、日本は消極的、中国は「気分を上げたい」、韓国は「所有したい」という傾向か』

株式会社A3『節約志向でも旺盛な推し活消費、「推しがいる」人の約7割が「推しにお金を使う」と回答 市場規模は約3.9兆円と推計』