(※写真はイメージです/PIXTA)
突然、夫を失った42歳妻「涙も出ない」
都内のメーカーに勤める会社員だった安藤誠さん(45歳・仮名)。10年前に東京郊外のマンションを購入し、妻の久美子さん(42歳・仮名)、中学2年生の長男(14歳)、小学5年生の長女(11歳)と暮らしていました。
課長に昇進したばかりで、月収は約50万円、手取りにすると約40万円。そこからローン返済で月11万円が引かれると、残り29万円ほど。決して贅沢はできないものの、家族4人が安定して暮らすには十分な収入でした。ただ子どもの成長とともに教育費は膨らんでいくばかり。仕事を辞めて専業主婦になっていた久美子さんですが、長女が中学生にあがるタイミングで、仕事復帰を計画していました。
そんな日常は、ある日、終わりを告げます。誠さんが通勤途中に不慮の事故に巻き込まれ、帰らぬ人となったのです。突然のことに、葬儀の間は家族はみな慟哭。しかし泣いていられたのはほんの一瞬だったといいます。
「これからの生活のことを考えたら、不安が大きくて、とても泣いてなんていられませんでした」
団信に加入していたので、残りの住宅ローン残高は保険金で完済され、久美子さんに返済義務は移りません。1,800万円の保険金が支払われる予定。しかし、子どもの大学進学のために、できるだけ残しておきたい。遺族年金はどれだけもらえるだろうか? 残された家族3人が暮らしていける分くらい、もらえるとありがたいのだが……。
試しに遺族年金がどれほど受け取れるものか、ネットのシミュレーターで試算してみたという久美子さん。そこで、衝撃的な事実に直面します。
「夫の給与は額面で約50万円で、手取りで約40万円ありました。それに対して、私たちが受け取れる遺族年金は、15万、16万円と……そのときは詳しい金額まではわかりませんでしたが、大きくは外れないはず。これでは、今までの生活は到底維持できないと直感しました」
悲しみに暮れる時間すら、久美子さんには許されないようだったと振り返ります。
「泣いている場合じゃありませんでした。すぐにでも私が仕事を探さないとと、本当に焦りました。長男が生まれたあと、仕事をやめて専業主婦をしてきたので、仕事が見つかるかも不安でした」
10数年ぶりの仕事探しは難航したといいますが、何とか自宅からも程近い会社の事務職に採用が決まったという久美子さん。しかし、その後は仕事に家庭にと忙しい毎日で、誠さんのことをゆっくりとともらうことは、できていないといいます。