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算数が得意な小学生低学年は多いが、中学年以降、苦手な子が増加する理由
Q.行きは時速60キロ、帰りは時速40キロの時の往復の平均時速は?
これは速さと時間と距離の関係を理解していれば即座に答えが出ます。しかし、公式で覚えている分には答えにはたどり着かないでしょう。この問題を聞いて、「時速50キロ」と答えてしまう人は多いのですが、おそらく単純に二項を足して2で割ったのでしょう。距離や時間といった概念が「心内表象化」できていない証左です。ちなみに答えは「時速48キロ」です。
物理量のことを「かさ」と言ったりしますが、たとえば「学校までの距離」「通学にかかる時間」などの物理的なかさに気を留めれば、自分が「時速何キロ」で歩いているのかも感じられるようになるでしょう。距離や時間に限ったことではなく、身のまわりのことでは「1日に何リットルの水を飲むか」「茶碗一杯のご飯は何グラムか」などといった、日常の生活とかさを結びつけることが知識として欠けていれば、それは知覚できることはありません。
くり返しになりますが、知覚できないことには、理解も期待できないのです。そして、「心内表象化」ができないまま、つまり理解しないまま、与えられた数字を公式に当てはめる。こんなことが日常的に行われているのです。理解できないことには、いかに公式を教えても、正しい答えにはたどり着きません。このあたりが、学校の教師、塾の教師、あるいは親たちのジレンマの原因でしょう。
小学生は低学年のうちは算数が得意な子が多いのですが、中学年以降、数学が苦手な子が増加します。文章題でつまずくのです。算数の文章題は「記憶」では太刀打ちできません。もちろん、抽象度が高くなる中学の数学も「記憶」ではうまくいきません。物理も同様です。また、社会科も記憶に頼るしかないのです。この様にして、子どもたちの学習の課題が「理解力」が鍵であることに気づかないか、あるいはそのことから目を背け続ける限り、学習は「記憶」という低次の心理作業に終止することになってしまうのです。
船津 洋
株式会社児童英語研究所
代表取締役所長