(※写真はイメージです/PIXTA)
将来性で注目!万博・IRが控える「ニシ」エリアの可能性
都心部の「キタ」「ミナミ」が現在の大阪市マンション市場を牽引する存在だとすれば、将来の成長ポテンシャルという点で最も注目されるのが「ニシ」エリアです。
このエリアの最大の魅力は、なんといっても大阪・関西万博やIR構想といった国家的なビッグプロジェクトの舞台が近いこと。会場となる夢洲(ゆめしま)を擁する此花区や、その対岸に位置する港区は、これらの開発が本格化するにつれて、交通インフラの整備や新たな雇用の創出が見込まれます。現在はまだ開発の初期段階にあり、価格水準は都心部と比較して割安感が否めません。たとえば、此花区の価格上昇率は40.7%、大正区は46.6%と、市全体の平均を大きく下回っています。
しかし、調査によると、この「割安感」こそが、将来の値上がりを期待する投資家や、手頃な価格でマイホームを求める実需層にとって大きな魅力になっていると指摘しています。万博開催に向けては、JR桜島線の夢洲への延伸や、大阪メトロ中央線の延伸・新型車両導入などが計画され、交通利便性が飛躍的に向上する見通しです。こうしたインフラ整備は、単なるイベント対応にとどまらず、地域の資産価値を長期的に押し上げる効果が期待されます。
また、同エリアに含まれる西区は、堀江や新町といったお洒落な街並みが若者層に人気で、都心へのアクセスも良好なことからすでに高い人気を誇っています。9年前比の上昇率は76.3%、平米単価は77万円と、すでに「キタ」「ミナミ」に迫る勢いを見せており、「ニシ」エリアのなかでも先行して評価が高まっている地区といえます。
ランキングから読み解く大阪市の地殻変動
最後に、9年間の価格上昇率を区ごとのランキング形式で見てみましょう。
1位「大阪市北区」…上昇率(9年前比)126.5%、平米単価102.0万円
2位「大阪市中央区」…上昇率(9年前比)87.5%、平米単価87.0万円
3位「大阪市西成区」…上昇率(9年前比)87.0%、平米単価40.0万円
4位「大阪市西区」…上昇率(9年前比)76.3%、平米単価77.0万円
5位「大阪市天王寺区」…上昇率(9年前比)75.9%、平米単価70.0万円
1位の北区、2位の中央区は、前述の通り都心再開発を象徴する結果です。4位の西区、5位の天王寺区も、職住近接や良好な住環境を背景とした安定した人気を反映しています。
ここで特に注目すべきは、3位にランクインした西成区。平米単価は40万円と24区内で見れば依然として低い水準ですが、上昇率は87.0%と中央区に匹敵するほどの伸びを見せています。その背景には複数の要因が考えられます。ひとつは、訪日外国人観光客の増加。比較的安価な宿泊施設が多いことからバックパッカーなどの拠点となり、人の流れが活発化しました。さらに、星野リゾートが展開するホテル「OMO7大阪 by 星野リゾート」が新今宮駅前に開業したことは、エリアのイメージを大きく変える契機に。これまで未開発であった土地の再開発が進むことへの期待感が、地価の安さも相まって高い上昇率につながったと分析考えられます。
大阪市の中古マンション市場は、全体として安定した上昇基調を維持しています。しかし、再開発によって完成された価値を持つ都心部と、未来の開発ポテンシャルを秘めたベイエリアという、異なる魅力を持つエリアが共存する複雑な様相を呈しています。世界的な金利動向や高止まりする建築コストといった外部要因に無視できません。購入や売却を検討する際には、マクロな視点と各エリアのミクロな視点、双方を見極めることが重要です。
[参考資料]
マンションリサーチ株式会社『大阪市中古マンション価格推移と上昇率ランキング|USJ・万博で注目の「ニシ」エリアの可能性【2025年10月最新】』