「終の棲家」として選んだはずの老人ホームから、ある日突然退去を求められる。そんな「まさかの事態」は珍しくありません。実は多くの施設では、入居契約書に特定の条件下での退去要件を定めています。入居後に後悔しないため、事前に知っておくべき重要なポイントとは?
〈年金13万円〉84歳母が入居する「老人ホーム」から緊急連絡…駆けつけた55歳長女が絶句した「まさかの惨状」 (※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホーム…契約書に記された退去要件

聡子さんのように、「老人ホームは一度入居すれば安心」と考えている人は少なくありません。しかし、有料老人ホームなどの介護施設は「終の棲家」が保証されているわけではなく、特定の条件下では退去を求められるケースがあります。株式会社Speee/ケアスル 介護が、介護施設の入居経験がある人もしくはその関係者に行った調査があります。それによると、「現在入居している施設は何施設目ですか?」との問いに対し、「1施設目」が61.6%と圧倒的である一方、「2施設目」28.4%、「3施設目」7.2%と、複数に及ぶケースが4割近くありました。自ら退去を決めたにせよ、聡子さんの母のように退去勧告を受けたにせよ、「終の棲家だから安心」というわけではないことは、この調査結果からも想像できるでしょう。

 

ほとんどの施設の「入居契約書」や「重要事項説明書」には、退去に関する要件が明記されています。主に、以下の3つのケースが一般的です。

 

1.医療依存度の変化

入居時には自立していても、病状の悪化などにより、施設が提供する医療・看護の範囲を超えるケア(常時の喀痰吸引や経管栄養など)が必要になった場合です。施設の看護体制では対応が困難と判断されると、退去の対象となることがあります。

 

2.共同生活の継続が困難な場合

聡子さんの母親のケースがこれにあたります。認知症の進行などにより、他の入居者への暴力・暴言、器物破損といった行為が頻繁に見られ、施設側で安全の確保が難しいと判断された場合です。

 

3.利用料の滞納

定められた期日までに施設利用料の支払いがなく、それが一定期間続いた場合も、契約解除、すなわち退去の理由となります。

 

これらの要件は、契約時に必ず説明されるべき重要な項目です。しかし、家族も本人も入居が決まった安堵感から、詳細な確認を怠ってしまうことがあります。「まさか」の事態を避けるためにも、契約書や重要事項説明書には必ず目を通し、不明な点はその場で確認することが、自分と大切な家族を守るために不可欠です。

 

[参考資料]

株式会社Speee/ケアスル 介護『介護施設の転居回数は?「ケアスル 介護」にて介護施設の転居に関わるアンケートを実施』