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50代からの挑戦。「夢」で終わらせないための現実的な備え
日本政策金融公庫『2023年度新規開業実態調査』によると、開業時の年齢は50代が25.4%を占め、ミドルシニア世代の起業は決して珍しいことではありません。「定年前にひと花咲かせよう」という気概で挑戦する人も多いのでしょう。しかし、一方で厳しい現実もあります。中小企業庁『中小企業白書』では、廃業の理由として常に「販売不振」が上位に挙げられます。佐藤さんのように、大企業で培ったスキルが、個人の「営業力」と直結するとは限りません。「会社の看板」という強力な後ろ盾を失った際の戦い方を、事前にシミュレーションしておく必要があります。
次に重要なのが、資金計画です。退職金の全額を事業資金に投下するのは極めて危険な選択といえます。事業が軌道に乗るまでの期間を想定し、最低でも1年、できれば2年分の生活費を「生活防衛資金」として、事業資金とは別に確保しておくべきです。
最後に、失敗したときの「保険」も必要です。厚生労働省『令和6年雇用動向調査』によると、50~54歳の転職入職率は男性で4.7%と、20代後半の13.6%と比較して著しく低い水準です。つまり、一度レールを外れた50代が正社員として再就職できる確率は、他の年代よりも低いという現実を直視しなければなりません。「いつまでに目標を達成できなければ撤退する」という明確なラインを事前に設け、傷が浅いうちに次の一手を打てる準備をしておくことが、挑戦を「無謀な賭け」にしないための最低限の備えだといえるでしょう。
[参考資料]
日本政策金融公庫『2023年度新規開業実態調査』
中小企業庁『中小企業白書』
厚生労働省『令和6年雇用動向調査』