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「会社の看板があったから仕事ができた」痛恨の誤算
大手メーカーで企画部長を務めていた佐藤誠さん(53歳・仮名)は、社内でも一目置かれる存在でした。しかし、会社の業績に翳りが見え始め、自身のキャリアの終着点を意識するようになったことに、漠然とした焦りを感じたといいます。
「このままでいいのかと、自問自答。幸い、早期退職の募集があり、退職金が割り増しで3,000万円ほど手に入ることになったんです。自分の企画力なら、外でも通用するはずだ。『俺はまだやれる』、そう信じて疑いませんでした」
佐藤さんはその退職金を元手に、長年の夢だった法人向けの経営コンサルティング会社を設立。輝かしい第二の人生が始まるはずでした。しかし、現実は非情です。会社の看板を失った瞬間、あれほど得意だった顧客への提案がまったく響かなくなったのです。
「会社員時代は、面白い企画を出せば自然とクライアントが反応してくれた。でも、一人になるとそうはいかない。看板がなくなったいま、企画を売るための営業がまったく通用しなくなったのです」
昔の取引先を頼っても、「佐藤さんの話は面白いけど、個人事務所に発注するのはリスクがある」と、やんわり断られる日々。プライドが邪魔をして、テレアポや飛び込み営業といった泥臭い活動もできませんでした。
「『元〇〇の佐藤さん』としてしか見てもらえず、新規契約はゼロ。事務所の家賃や交際費で、退職金はみるみるうちに溶けていきました」
わずか半年で資金は底をつき、佐藤さんは廃業を決意。再就職に活路を見出そうとしましたが、53歳という年齢の壁と、高かった前職の給与水準がネックとなり、書類選考すら通過しないのが現実でした。とはいえ、生活のため、働かないと生きていけません。現在、佐藤さんは生活費を稼ぐために時給1,580円の夜間倉庫でアルバイトをしています。
「自分よりずっと若いリーダーに指示されるたび、惨めな気持ちで胸が張り裂けそうになります。まさか、こんな結末が待っているとは夢にも思いませんでした」