(※写真はイメージです/PIXTA)
誰にでも起こりうる「老後の想定外」という現実
羽賀さんを襲った「三重苦」は、決して特別なケースではありません。むしろ、多くの人が直面する可能性があるといっていいでしょう。羽賀さんの場合、ただ想定外の支出が同時期に集中して発生したに過ぎないのです。
第一に「医療・介護費」です。生命保険文化センターの調査によれば、直近の入院時の自己負担費用の平均は20万円近くにのぼります。また、介護が必要になった場合、住宅改修や介護サービスの利用で一時的に平均74万円、月々平均8.3万円の費用がかかるというデータもあります。これらはあくまで平均値であり、病気や要介護度によっては、さらに大きな負担となる可能性があります。
第二に「住宅関連費」です。長年住み慣れた持ち家も、永遠に安泰ではありません。国土交通省の調査では、リフォーム資金の平均は137万円。特に築30年を超えると、羽賀さんのような屋根や外壁の修繕、給排水管の交換など、100万円単位の出費が発生するケースは珍しくありません。
そして第三に「家族への援助」です。2023年、離婚件数は18万3,808組。一方、厚生労働省の調査では、母子世帯の約28%しか養育費を受け取っていません。受給率が低い理由としては、「相手と関わりたくない」が最も多く、次いで「相手に支払う能力や意思がないと思った」が挙がっています。母子世帯は経済的に困窮しているケースが多く、実家に戻るケースも珍しくありません。
さらに、長寿化が進むなか、自身の定年後に親の介護が始まる「老老介護」の問題も顕在化しており、これもまた想定外の支出につながるリスクです。
「平穏な老後」という計画は、こうした「まさかの出来事」の前にもろくも崩れ去ることがあります。
「老後破産も覚悟しました」という羽賀さん。しかし「孫と一緒の日常は、代えがたいものがあります。それに想定外の出来事が一度に起きただけで、もうこんなことはないでしょう。その気になれば、まだ働ける年齢ですしね」
[参考資料]
公益財団法人生命保険文化センター『2022(令和4)年度 生活保障に関する調査』
国土交通省『令和5年度 住宅市場動向調査報告書』
厚生労働省『人口動態調査』
内閣府『令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果』