念願のマイホーム。しかし、安定した収入があっても手放さざるを得なくなる状況に直面することも珍しくありません。そこには個人の努力だけではどうにもならない、マンション特有の構造的な問題が潜んでいる場合も。その深刻な実態とは?
もう、限界です…〈月収58万円〉47歳サラリーマン、購入から8年「都内マンション」を手放した「切実理由」 (※写真はイメージです/PIXTA)

値上げされる修繕積立金…限界を感じたら

国土交通省の調査によれば、多くのマンションで採用されている「段階増額積立方式」では、積立金が最終的に平均で約3.6倍、多いケースでは5倍以上に跳ね上がる実態がありました。これは、新築時に月7,000円だった負担が、将来的に月2万5,000円以上に膨れ上がる計算で、住民の合意形成の障壁や家計圧迫の要因と指摘されてきました。

 

この事態を受け、国土交通省は新しい方針を示しました。ポイントは3つ。

 

1.値上げ幅の上限を当初の「1.8倍」程度に抑制する

2.新築時の設定額を、将来の均等割りの負担額(基準額)の「0.6倍以上」とする

3.最終的な負担額も基準額の「1.1倍以内」に収める

 

そもそも積立金が不足する背景には、分譲時に安く見せるため新築時の設定額が低く抑えられがちな構造的問題や、近年の建設資材・人件費の高騰があります。実際に、計画に対し積立金が不足しているマンションは3割を超えるとされています。国土交通省が示した新方針は、将来の過度な負担増を避けつつ、初期段階から計画的に資金を確保することを目的としています。マンション管理を巡る環境が変化するなか、管理組合にはより長期的視点に立った資金計画が求められています。

 

しかし、値上げの末「もう限界だ」と感じる状況に陥ってしまったら、どうしたらいいのでしょうか。田中さんのように、思い切って「住み替える」という選択も、前向きで現実的な一手といえるでしょう。

 

幸いにも不動産価格が上昇している局面であれば、売却によって住宅ローンを完済し、手元に資金が残る可能性もあります。その資金を元手に、より維持費の負担が少ない郊外の物件や、規模の小さな住居に移ることで、家計にゆとりが生まれるかもしれません。

 

もちろん、売却だけが唯一の答えではありません。しかし、目の前の負担増にただ耐え続けるのではなく、専門家にも相談しながら、売却や賃貸に出すことなども含めた「住まいの最適化」を検討してみる価値は十分にあるでしょう。

 

[参考資料]

国土交通省『平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状』