親を想い、最善の介護環境を整えたいと願うのは子の当然の気持ち。しかし、その想いが親の本当の願いとすれ違っているとしたら。「迷惑をかけたくない」という親の気持ちと、「親孝行したい」という子の気持ち。お互いを思うがゆえのすれ違いで後悔しないために、今何ができるのでしょうか。
ありがとうと言えばよかった…〈年金月14万円〉の母、ホームで84年の人生を終えて3年。58歳娘が今も後悔を口にする理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

「最期を迎えたい場所」の親子のすれ違いを防ぐには

厚生労働省『令和4年度 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査』によると、

 

「Q. あなたが人生の最終段階で受けたいもしくは受けたくない医療・ケアについて、ご家族等や医療・介護従事者と詳しく話し合っていると思いますか」

 

という質問に対し、「詳しく話し合っている」、「一応話し合っている」と回答した人は合わせて29.9%でした。「話し合ったことがない」と回答した人にその理由を尋ねたところ、最も多かったのが「話し合うきっかけがなかったから」(62.8%)でした。また、

 

「Q. どこで最期を迎えたいかを考える際に、重要だと思うことはなんですか」

 

という質問(複数回答)に対しては、「体や心の苦痛なく過ごせること」(60.2%)や「経済的な負担が少ないこと」(55.9%)よりも、「家族等の負担にならないこと」(71.6%)が大きく上回りました。人生の最期において、遺される側と遺す側の双方が、強く相手を思いやっていることがわかります。

 

お互いを大切に思うからこそ、本音を隠してしまう。内藤さん親子の場合も、親は子に負担をかけまいと「ありがとう」と言い、子は親に最高の環境をと願いました。その根底にあるのは、紛れもない愛情です。しかし、その優しさがすれ違いを生み、残された側に「もっとこうすれば良かった」という後悔を残してしまうのは、あまりにも悲しい現実です。

 

「もしもの話」は、つい避けてしまいがちです。しかし、元気なうちだからこそ、お互いの本当の気持ちを確かめ合う時間を持つことが大切です。「ありがとう」という感謝の言葉とともに、「本当はどうしたい?」と一歩踏み込んで聞いてみること。それが、後悔のないお別れと、穏やかな最期につながる第一歩になるのかもしれません。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査』