親が亡くなったあとの遺産整理。それは時に、家族も知らなかった故人の一面や想いに触れる瞬間でもあります。残された財産を前に、家族が戸惑うケースも少なくありません。故人の遺志を尊重し、円満に手続きを進めるために、知っておくべき相続の基本的な知識と、財産だけでなく想いを継ぐことについてみていきましょう。
うっ、うそだろ…82歳で逝った父の遺産整理。金庫から出てきた〈3,000万円の通帳〉と〈知らない女性からの手紙〉に長男、絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

相続は財産ではなく「想い」を継ぐこと。「想続」のためにできる準備

人が亡くなると、遺産があろうとなかろうと、相続が発生します。民法で相続人となることができると定められた相続人を法定相続人といい、配偶者は必ず相続人になります。血族には順位がついており、先順位の人が相続人となります。第1順位は被相続人の子、第2順位は直系尊属(被相続人の父母など)、第3順位は被相続人の兄弟姉妹です。田中さんの場合、昭さんの妻(一郎さんらの母)は亡くなっているので、一郎さんらきょうだいが相続人となります。

 

遺産分割には「①遺言による遺産分割」、「②相続人同士の協議による遺産分割」、「③家庭裁判所の調停による遺産分割」、「④家庭裁判所の審判による遺産分割」の4つの手続きがあります。田中さんの場合、遺言はなかったというので、3人で遺産分割協議を行い、遺産の分割方法を決めます。

 

法定相続人には、民法が定める相続分である「法定相続分」があり、相続人が子どもと配偶者の場合は、それぞれ2分の1ずつとなります。子どもが複数いるときは2分の1を子どもの人数で等分します。田中さんの場合、まずは3,000万円を3等分する、というのがよくあるケース。さらに3人には遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分である「遺留分」が認められています。その額は法定相続分の2分の1。つまり、遺産分割で揉めたとしても500万円ほどは主張できるというわけです。田中さんきょうだいはどうしたのかというと……。

 

「遺言書もなかったですし、3人で分けても問題なかったのですが、あんな手紙を読んだあとに『じゃあ3等分』なんて言えます? もったいない気持ちがゼロだったわけではありませんが、私たちが相続するほうが面倒だなと思って……」

 

結局3人は、3,000万円は寄付、実家は売却し、売却益は3等分することにしたといいます。

 

[参考資料]

法テラス『相続に関するよくある相談』『遺産分割に関するよくある相談』