良かれと思って部下にかけたそのひと言が、実は「この人は話を聞いてくれない」と見切られる原因になっているかもしれません。管理職と一般社員1,000名を対象とした調査で、部下のやる気を削ぎ、信頼を失ってしまう上司の話し方の共通点が見えてきました。
実はバレバレです…部下が「この人には本音は言えない」と早々に見切る上司の話し方 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職をめぐる上司の後悔と部下の本音

さらに多くの管理職が頭を悩ませるのが、部下の突然の休職や退職です。今回の調査でも、管理職の約3人に1人(32.4%)が部下の突然の休職・退職を経験していると回答しました。問題は、その原因を上司が正しく認識できていない可能性があることです。

 

部下の退職・休職を経験した管理職が後悔していることの1位は、「業務量の負担や偏りを考慮すればよかった」(32.7%)という点でした。一方、上司が原因で退職・休職を考えた一般社員が当時「してほしかったこと」の1位は、「自分のキャリアや将来について対話の機会を増やしてほしかった」(25.0%)であり、両者の認識にはズレが見られます。

 

しかし、さらに深刻なギャップが「健康面への配慮」という項目で明らかになりました。管理職が後悔したこととして「部下の体調管理や健康面に気を付けること」を挙げたのはわずか22.2%で、8項目中、最下位でした。ところが、部下が「してほしかったこと」では、この項目が23.1%で2位にランクインしています。この結果は、上司が部下の業務遂行能力やキャリアプランに意識が向く一方で、部下は心身の健康状態にもっと気を配ってほしいと強く願っているという、見過ごされがちな、しかし決定的な意識の差を示しています。部下は、業務の成果だけでなく、そのプロセスで生じる心身の負担にも上司が寄り添ってくれることを求めているのです。

 

このギャップについて調査では、部下の「心身の健康」と「キャリアの未来」に目を向け、伴走する姿勢こそが現代のマネジメントに求められていると指摘しています。上司が「自分のために時間を使ってくれている」と部下が実感できるかどうかが、信頼関係を築く上での分水嶺となるのかもしれません。

 

今回の調査結果は、管理職が陥りがちな「表層マネジメント」の危険性を浮き彫りにしました。部下が本当に求めているのは、高度なマネジメントスキル以上に、「話しかけやすさ」や「丁寧な説明」、そして「健康への配慮」といった、人としての基本的な姿勢です。日々の業務に追われるなかでも、部下一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、その小さなサインを見逃さないこと。そうした地道な対話への時間投資こそが、部下との信頼を深め、変化の激しい時代を乗り越える強い組織の礎となるのではないでしょうか。

 

[参考資料]

カールツァイス株式会社『理想の上司No.1は「話しかけやすい」 1on1が「月に1回以上」と「半年に1回以下」で上司部下の関係性に約20%の差 「表層マネジメント」は”安心して対話できる上司の姿勢”で回避』