子の人生における大きな節目である住宅購入。その資金計画をめぐり、親の経済状況が浮き彫りになることがあります。喜ばしいはずの我が子の決断が、親世代に「家庭内での立ち位置」を痛感させる……。そこには、子の期待と親の現実を前に横たわる大きな溝がありました。
情けない…〈年収700万円〉38歳息子、義実家から援助を受けて〈都内・億ション〉購入。援助したくてもできない「68歳実父」の憂鬱 (※写真はイメージです/PIXTA)

「実はさ、マンション買ったんだ」息子からの突然の事後報告

中堅メーカーで勤め上げ、3年前にリタイアした林健司さん(68歳・仮名)。現在は妻と2人、年金と退職金を取り崩しながら、穏やかな毎日を送っています。ひとり息子の達也さん(38歳・仮名)は都内IT企業に勤めており、5年前に結婚。夫婦関係も良好(のようで)、健司さんにとっては特に心配の種もない存在でした。

 

その達也さんから電話があったのは、ある日の夕食後のことでした。

 

「父さん、元気? 実はさ、俺たち、マンション買ったんだ。来月には引っ越すから、落ち着いたら一度遊びに来てよ」

 

息子のマイホーム購入は喜ばしいことです。しかし、健司さん夫婦は達也さんからマンション購入の相談はおろか、検討しているという話すら一切聞いていなかったため、拍子抜けしたといいます。話を聞くと、購入したマンションはほぼ1億円。年収700万円ほどの達也さんには予算オーバーでしたが、義実家からの援助があったため決断できたとのことでした。

 

「どこも高くて、東京じゃ無理と諦めていたんだけど、あっちのお義父さん、お義母さんが『お金の援助はするから』と言ってくれてさ。トントン拍子に進んだんだよ。本当に感謝してる」

 

その言葉に、健司さんは胸がチクリと痛むのを感じました。相談がなかったということは、「頼りにしていない」と言われたも同然です。そして自分たちが何も知らされないうちに、妻方の実家が多額の援助を行い、人生最大の買い物であるマイホーム購入が完結していた。そんな事実に、健司さんはモヤモヤしたままだといいます。

 

「私たち夫婦は、自分たちの老後のことで精いっぱいで、何百万、何千万もの支援なんて無理。それは息子も分かっているはずです。だからこそ相談すらしなかったのでしょう。一方で、向こうのご両親はさっと援助できるほどの余裕がある……同年代ながら、格差を感じてしまいました」