(画像はイメージです/PIXTA)

少額から手軽に投資ができるとして注目されているクラウドファンディング。特に「投資型クラウドファンディング」は、配当や利息といった収益が得られることから、個人投資家を中心に急速に広がりを見せています。しかし、「実際にどんな仕組みで収益が生まれているのか?」「利回りはどう計算されているのか?」など、基本的な疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。本記事では公認会計士・税理士の専門家目線から、投資型クラウドファンディングの仕組みをわかりやすく解説します。

投資家の収益はどのように決まる?

分配金と元本返還のタイミング

投資型クラウドファンディングでは、利息や家賃収入からの分配金は案件ごとに分配スケジュールが異なり、投資家のキャッシュフローに大きな影響を与えます。分配頻度は主に次のようなパターンがあります。

 

毎月分配型:毎月配当が支払われるタイプで、定期収入を得られるイメージがつかみやすいのが特徴。資金管理やライフプランに活かしやすい点もメリットです。

 

四半期分配型:3ヵ月ごとにまとめて分配されるタイプ。毎月より管理が楽ですが、分配タイミングの間隔が空く分、収支計画をしっかり立てる必要があります。

 

元本返還:基本的に運用終了時にまとめて一括返還されることが多いですが、一部案件では事業者の都合や早期完了などにより運用期間中に元本の一部または全額が早期償還される場合もあります。早期償還は利息収入が短期間で終わる可能性もあるため、メリット・デメリットを理解しておきましょう。

投資家の収益モデル・事例

投資型クラウドファンディングは「少額から収益を得られる」というイメージが先行しがちですが、収益モデルをしっかり理解していないと「思ったより利益が少ない」「元本が戻ってこない」といった失敗につながります。ここでは不動産型と融資型の具体的なシミュレーションを通じて、収益がどう積み上がるのか、どんなリスクがあるのかを整理します。

不動産クラウドファンディングの場合

年利7%想定の案件に100万円を投資したとすると、以下になります。

 

・毎月の配当は、おおむね5,833円(7万円[=100万円×7%]÷12ヵ月)ずつ運用期間中に分配されます。

 

・運用終了時、物件が当初想定より高く売却できれば、追加の売却益(キャピタルゲイン)が分配金に上乗せされます。

 

・一方で、物件価格が下落して当初想定より安く売却する結果となった場合は、分配金が減少したり、最悪の場合は元本割れしたりする可能性もあります。

 

このように不動産クラウドファンディングの収益は「運用期間中の家賃収入」と「物件売却益」の両方から構成されており、売却価格の変動によって最終的な収益が大きく左右されるのが特徴です。加えて、不動産の稼働状況(空室率)や管理コストによっても毎月の分配額が変動するケースがあります。

 

ソーシャルレンディング(融資型)の場合

たとえば100万円を年利6%想定の融資案件に投資すると以下になります。

 

・運用期間中は毎月(約5,000円[=100万円×6%×1ヵ月/12ヵ月])または四半期(約15,000円[=100万円×6%×3ヵ月/12ヵ月])ごとに計算期間に対応した貸付利息に相当する金額が分配され、安定的に収入を得ることができます。

 

・運用終了時には貸付先から返済された元本が投資家に一括で返還されるのが基本的な流れです。

 

・ただし、融資先企業が返済不能(倒産・破産など)になった場合には、元本毀損や分配金停止などのリスクがあります。貸付先の財務状況や信用力の見極めは、融資型クラウドファンディングの最重要ポイントです。

 

ソーシャルレンディングは不動産の値動きリスクを受けにくい反面、貸付先の信用リスクが最大の焦点です。想定利回りが高い案件ほどハイリスクであることが多いため、リターンの数字だけで判断せず、案件の詳細を必ず確認しましょう。

 

投資家として意識すべきポイント

・利回りと元本の安全性は一般的にトレードオフであることを理解する。


・運営会社の手数料や税金で実質利回りが目減りする可能性もある。


・投資額を分散し、複数案件に少額ずつ投資することでリスクをコントロールするのも有効。

投資で失敗しないための心構え

投資型クラウドファンディングは「少額から投資を始められる」「配当や利息で収益が得られる」といった魅力がありますが、仕組みを正しく理解しておくことが大切です。

 

利回りは「想定」であり保証ではないこと、元本割れリスクも含めて許容できる範囲で投資を行いましょう。案件ごとに利回りの計算方法や分配スケジュールが違うため、内容をよく確認した上で、自分の投資目的に合った案件を選ぶことが重要です。
 

 

辻哲弥

税理士

 

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