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共働き妻が知らなかった「遺族年金の落とし穴」
由美子さんのように、遺族年金について「亡くなった配偶者の年金の4分の3がもらえる」と認識している人は少なくありません。しかし、これは特定の条件下での話であり、特に65歳以上で自身の老齢厚生年金を受け取っている共働き世帯の女性にとっては、大きな誤解を生む原因となっています。
まず、「遺族年金は亡くなった配偶者の年金の4分の3」という言葉の根拠は、これは遺族厚生年金の計算式の一部から来ています。遺族厚生年金の額は、亡くなった人の老齢厚生年金の「報酬比例部分」を基に計算され、その金額の4分の3が原則となります。
ここでひとつめの誤解。あくまでも厚生年金の4分の3であり、基礎年金は含まれません。基礎年金と厚生年金、足したもの(総額)の4分の3と勘違いしている人は多くいます。
さらに問題は65歳になり、自身も老齢厚生年金を受け取る権利が発生したときに起こります。
自身の「老齢厚生年金」は全額支給されます。次に、亡くなった配偶者の遺族厚生年金の額(A)と、自身の老齢厚生年金の額(B)を比べます。もし(A)が(B)を上回る場合のみ、その差額分が遺族厚生年金として支給されます。つまり由美子さんは亡くなった夫・浩一さんと同程度の年金を受け取っている時点で、受け取れる遺族年金は限りなくゼロだということです。
「十分働いて、十分年金をもらっているから、遺族年金はなくても大丈夫、という理屈ですよね。理解できますが、『働き損』という思いがゼロというわけではありません」
長年働き、保険料を納めてきた結果、自身の老齢厚生年金が増えるほど、配偶者の死後に受け取れる遺族厚生年金が減ってしまう。この仕組みが、由美子さんのような共働きだった妻に「働き損」という感覚を抱かせてしまう大きな要因となっています。悲しみのなかで、さらに経済的な不安に直面しないためにも、公的年金の仕組み、特に共働き世帯に関わるルールについては、元気なうちから夫婦で正しく理解しておくことが重要です。
[参考資料]
日本年金機構「遺族厚生年金」