進学や就職、結婚などで「実家を出る」人は多いものの、さまざまな理由から「実家に残る」という決断をした人も。そこには大きな「経済的メリット」がある場合も多いですが、いつまでもメリットを享受できるとは限りません。一瞬にして終わりを迎えることも珍しくはないのです。
〈年収600万円〉〈貯金1,000万円〉実家暮らしの42歳ひとり息子。完璧な人生設計を崩壊させた「72歳父のひと言」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「お前の人生だ」…親の“終活”が子の“自立”を迫る時

親の家は、自分の家。親の資産は、いずれ自分の資産。その根拠のない思い込みが根底から崩れてしまったわけです。

 

総務省『家計調査 家計収支編 2024年平均』によると、単身者の1ヵ月の支出は、持ち家の場合は16万3,971円、民間借家は18万7,628円。賃貸の場合の住居費は平均5万3,135円なので、持ち家であれば経済的に余裕がある分、他のところでお金を使っても支出は抑えることができます。実家暮らしには大きな経済的メリットがあることは明白です。

 

この調査結果は、実家暮らしの加藤さんが享受してきた経済的メリットの大きさを裏付けています。家賃相場が高い都内であれば、その恩恵は月5万円以上になることも珍しくありません。まさしく、このメリットこそが1,000万円という貯蓄の土台となっていたのです。

 

そんなメリットを、親の住み替えによって手放すことになった加藤さん。内閣府『令和6年版高齢社会白書』によると、60歳以上の人に今後の住まいについての意向を尋ねた調査では、「現在の住居に住み続けたい」と回答した人が7割を超える一方、「サービス付き高齢者向け住宅や、有料老人ホームなどの施設(介護保険施設を除く)」と希望する人は10.6%。加藤さんの両親のようなケースは、珍しいことではないのです。

 

親の人生は親のもの、子の人生は子のもの。親の資産をあてにしていた加藤さんは、改めて人生設計を考える必要に迫られています。

 

「貯金が1,000万円あるといっても、都内で持ち家なんて難しい。賃貸が現実的ですが、今のようにお金は貯まらないでしょう。42歳にもなって、親の庇護がなくなるというだけで、こんなにも将来が不安になるなんて……情けない話です」

 

[参考資料]

総務省『家計調査 家計収支編 2024年平均』

内閣府『令和6年版高齢社会白書』