理想の間取り、最新の省エネ設備、そして高年収を背景にした潤沢な住宅ローン。夢のマイホーム計画は、輝かしい未来を約束してくれるように思えます。しかし、多くの人が購入時の「イニシャルコスト」に集中するあまり、もう一つの重要な側面を見落としがちなようです。
〈世帯年収1,320万円の30代夫婦〉8,000万円で理想の家を新築、大喜びも…2年後に“誰もいない”子ども部屋をみつめて落胆。待ち受けていた「想定外の未来」 (※写真はイメージです/PIXTA)

奨学金返済を乗り越え、夢のマイホームへ

夫のツトムさん(仮名/34歳)は年収720万円、妻のエリさん(仮名/34歳)は年収600万円。世帯年収1,320万円の共働き夫婦です。2人の出会いは大学時代。ともに高額な奨学金を借りていましたが、卒業後すぐに結婚し、励まし合いながら、10年弱で完済しました。そのあいだは古い賃貸アパートで身を寄せ合って暮らし、出産も控え、節約を重ねてきた努力家です。

 

奨学金完済を機に、2人は念願の新築住宅の購入を決断します。貯蓄はほぼゼロでしたが、住宅メーカーの営業担当者から「お二方の年収なら、8,000万円のフルローンでも問題ありません」と後押しされ、購入に踏み切りました。

 

それまで狭いアパートで暮らしてきた反動か、購入したのは延床面積約65坪の大きな家。「子どもが3人欲しい」というエリさんの希望を反映し、3つの子ども部屋があります。また、不動産業者の勧めで太陽光発電や蓄電池を設置し、床暖房で未来の子どもたちに快適な暮らしを、とまさに理想をすべて叶えた住まいです。

 

しかし、建物にお金をかけすぎたため、土地は駅からバスで20分の郊外に。それでも、奨学金を完済した自信から、「住宅ローンも繰上げ返済で早く終わらせれば大丈夫だろう」と楽観していました。

第2子妊娠中に発覚した衝撃事実

新居での生活が始まって3年が経ったある日のこと。

 

「子どもの教育費やこれからのこと、一度ちゃんと計算してみない?」

 

第2子妊娠中のエリさんの提案で、夫婦は自分たちの将来のキャッシュフローを試算してみることにしました。

 

まず、現在の収入と住宅ローン返済額を入力。そこに、希望する子ども3人を私立大学に進学させた場合の教育費を加えていきます。ここまでは、少し厳しいながらも想定の範囲内でした。

 

しかし、エリさんが次に問いかけます「家の維持費って、どれくらいかかるのかな?」。

 

2人は、住宅メーカーの資料やネットで、自分たちが設置した設備の耐用年数と交換費用を調べはじめました。そして、その結果に愕然とします。