(※写真はイメージです/PIXTA)
孤独が生んだ「依存」という病
絶望的な気持ちで過ごしていたある日、見知らぬ番号から一本の電話がかかってきました。それは、佐藤さんの息子さんからでした。
「母が、本当に申し訳ありませんでした……」
電話口で何度も繰り返される謝罪。そして、語られたのは信じがたい真実でした。
「父が亡くなってから、母は寂しさを紛らわすためにギャンブルに手を出していたようです。そしてギャンブルの負けはギャンブルで返すしかないと……私たち含め、色々なところで借金を重ねたらしく……」
300万円は、すべてギャンブルの借金返済に充てられていたのです。そして佐藤さん本人は、現在、ギャンブル依存症の治療のため、専門の回復支援施に入所しているとのことでした。
「今はただ、治療に専念させてやりたいんです。母に代わり、私が必ず返済いたします。どうか、少しだけお時間をいただけないでしょうか」
息子の悲痛な声に、田中さんはただ茫然とするしかなかったといいます。
(親友が……ギャンブル……依存症……)
言葉が頭の中で反復すれど、理解するまで時間がかかったといいます。
ギャンブル等依存症とは、ギャンブル等にのめり込んでコントロールができなくなる精神疾患のひとつ。厚生労働省の調査によると、過去1年におけるギャンブル等依存が疑われる人の割合は、全体1.7%、男性の2.8%、女性の0.5%といわれています。また過去1年間に最もお金を使ったギャンブルの種類としては、男女ともにパチンコがトップで、男性の43.4%、女性が60.9%でした。
高齢者もギャンブル依存症と無縁というわけではなく、社会的・精神的孤立や、経済的余裕から、それまでギャンブルをしたことがなかった人が、貯蓄を使い果たしたり借金を重ねたりして「老後破産」に至るケースも。症状には 強い欲求やコントロールの困難があり、精神保健福祉センターや自助グループ、専門医療機関への相談が重要です。
「私も夫を亡くしているから、寄り添ってあげられると思っていましたが……ダメだったんですね。なぜ、気づいてあげられなかったのでしょう。思い上がりだったのでしょうか、彼女を親友だと思っていたのは」
[参考資料]
厚生労働省『ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査(令和5年度)』