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涙の訴え…40年来の友情を揺るがした「300万円」
田中良子さん(68歳・仮名)。10年前に夫を亡くし、現在は月15万円の公的年金を頼りに、都内で一人、静かに暮らしていました。最近の楽しみはガーデニング。自宅の庭にプランターを並べて、ちょっとした野菜を育てるのだとか。
「結構、たくさん採れるのよ。物価高だから助かるわ」
そんなガーデニングの話をして一緒に盛り上げることができるのが、40年来の親友だという佐藤幸子さん(68歳・仮名)。さまざまな悩み事を共有してきた仲だといいます。1ヵ月に一度、デパートのカフェでお茶して、何時間もおしゃべりをするというのが定番であり、老後の楽しみのひとつだといいます。
そんな穏やかな日常が崩壊したのが3ヵ月ほど前のこと。インターホンを鳴らし玄関に立っていたのは、血の気の引いた顔の佐藤さん。
「本当にごめんなさい。どうしてもお金が足りなくて……」
泣きながら話すには、「孫の大学の入学金がどうしても足りず。学費の納付期限が明後日に迫っている。このままでは合格が取り消されてしまう」と。だから「お金を貸してほしい」というのです。互いの家庭の内情も分かち合ってきた仲。その親友のただならぬ様子に、何とかしてあげる以外の選択肢はありませんでした。
いつもは年金のなかで生活できるよう節制。そのため、老後を見据えて貯めてきたお金は、1円も取り崩したことがなかったという田中さん。まさか最初に親友に貸すために取り崩すとは思ってもみませんでした。
翌日、預金から300万円を引き出し、佐藤さんへ。「本当にありがとう。これで安心だわ。ちゃんと返すから」と何度も何度も感謝を伝える佐藤さんに、「大丈夫、落ち着いたらでいいからね」と田中さん。それが最後でした。翌日から佐藤さんとは連絡が取れなくなったのです。電話は鳴っても出ることはなく、ラインも既読がつきません。
「何があったのか。突然のことでパニックになりました。警察に行ったほうがいいのか。でも事件なら、家族から連絡がいくはず……どうしたらいいのかわからず、ただ時間だけが過ぎていったんです」