親や祖父母からの資金援助で、夢のマイホームを──。それを後押しする「住宅取得等資金の贈与税非課税措置」は、多くの若い世代にとって心強い制度です。しかし、適用要件を誤解し、のちのち後悔することも……。実情をみていきます。
念願のマイホーム購入!それぞれの親から1,000万円ずつ贈与を受けた「世帯年収820万円・33歳夫婦」…税務署から〈否認通知〉が届いて愕然。やり直しもできず、さらなる愕然 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢世代に偏在する資産を、現役世代へ

政府は経済活性化を目的とし、税制優遇によって世代間の資産移転を促しています。その代表格が、親や祖父母から住宅取得のための資金援助を受けた際に、一定額まで贈与税が非課税となる「住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置」です。

 

2025年9月現在、この制度では質の高い省エネ住宅なら1,000万円、一般住宅なら500万円までが非課税となります。住宅価格が高騰するなか、マイホーム購入を考える若い世代にとって心強い制度といえるでしょう。

 

しかし、この制度はその適用の条件が複雑なため、インターネットの情報だけを頼りに自己判断で進めてしまうと、思わぬ落とし穴にはまる危険があります。

33歳同い年夫婦のマイホーム計画

地方都市に住むヨシヒコさん(仮名/33歳)と妻のカナさん(仮名/33歳)。ヨシヒコさんは年収710万円の会社員、カナさんは年収110万円のパート社員です。夫婦は、太陽光発電システムを備えた省エネ性能の高い注文住宅の購入を計画していました。

 

夫婦は、省エネ性能の高い注文住宅(総額6,000万円)の購入を計画していました。自己資金は、ヨシヒコさんの貯蓄500万円と、双方の父親からの贈与。残りの額はヨシヒコさん名義の住宅ローンで賄う予定でした。

 

性能の高い住宅なら夫婦それぞれ1,000万円の非課税枠を使えると知ったヨシヒコさんは、次のような計画を立てます。

 

土地(1,500万円): カナさんの父からの贈与1,000万円+ヨシヒコさんの貯蓄500万円で購入。土地はカナさん単独名義とする。

建物(3,800万円): ヨシヒコさんの父からの贈与1,000万円を頭金に、残り3,500万円をローンで支払い。建物はヨシヒコさん単独名義とする。

 

半年前に双方の父親から入金も済み、工事は翌年4月に着工、完成は9月ごろを予定。順調にみえました。