お金の話は夫婦であってもデリケートなもの。特に共働きであれば、お互いがどれだけの収入があり、何にどれだけ使っているのか……詳しくは知らないということも珍しくないでしょう。しかし本音で語り合うことを避けていては、思わぬ亀裂を生むこともあるようです。
お前の金じゃないだろ!〈パート月収8万円〉65歳妻がへそくりで買った〈20万円のバッグ〉に〈年金月19万円〉66歳夫が大激怒も、悲しすぎる勘違いに涙 (※写真はイメージです/PIXTA)

1冊の家計簿が明らかにした、妻の「65年間の真実」

「まさか、あんなに怒られるなんて、思ってもみませんでした」

 

都内で暮らす山田久美子さん(65歳・仮名)です。1年前に夫の健司さん(66歳・仮名)が定年退職し、現在は健司さんの年金(月額約19万円)と、久美子さんが近所のスーパーで続けるパート収入(月額約8万円)で生活しています。

 

事件が起きたのは、3ヵ月前のこと。久美子さんは、憧れのブランドのバッグを20万円で購入。「人生で初めて自分のためだけにこんなに高い買い物をした」といいます。65歳になり、年金を受け取りだした久美子さん。人生の大きな節目として、「一生に一度くらい、自分のために贅沢をしたって罰は当たらないだろう」と決断。独身時代からの貯金と、パート代から少しずつ貯めてきたへそくりを使ったといいます。

 

「やっと買えた、と嬉しくて。少し気恥ずかしさはありましたが、夫も驚かせようと思っていました」

 

しかし、健司さんの反応は予想とは真逆のものでした。クローゼットに大切にしまっていたバッグを見つけた健司さんは、値段を知るや否や、血相を変えて久美子さんを問い詰めたのです。

 

「こんな高いものを買うなんて、どういうつもりだ! お前の金じゃなく、俺が必死で働いてきたお金で、そんな無駄遣いをしやがって!」

 

(えっ、俺が必死で働いてきたお金? これは私のお金で買ったものなのに……)

 

反論しようとしましたが、興奮した健司さんの耳には届きませんでした。「年金暮らしの自覚がないのか」「これからの生活をどう考えているんだ」と、怒りはエスカレートするばかりでした。あまりの剣幕と、自分の努力を全否定された悲しさで、久美子さんは言葉を失い、その場に泣き崩れてしまったといいます。

 

しばらくして、少し冷静さを取り戻した久美子さんは、黙ってリビングの棚から1冊の家計簿と、古い通帳をテーブルに置きました。家計簿は、結婚当初から久美子さんが毎日欠かさずつけてきたものです。さらに久美子さんの個人通帳。そこには、パート収入の振込履歴と、今回のバッグの代金が引き落とされた記録だけが残っていました。健司さんの年金が振り込まれる口座からは、1円も動いていませんでした。

 

「バッグは、私が独身の時から持っていた貯金と、パート代から少しずつ貯めたお金で買いました。“あなたのお金”には、一切手をつけていません」

 

自分の大きな勘違いに気づいた健司さん。妻が自分の年金を湯水のように使っているどころか、妻自身の収入と努力で家計の不足分を補い、必死に生活を守ってくれていたことは、家計簿と通帳からも明らか。それなのに、自分は頭ごなしに否定してしまった――「すまなかった……」と健司さんはひと言。

 

「黙って高価な買い物をしたのはいけなかったですね……」