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かわいい孫のためなら…月5万円の仕送りが始まった日々
「お母さんのおかげで、あの子も本当に喜んでるわ」。受話器の向こうで弾む娘の声が、なによりの喜びでした――。
都内で一人暮らしをする中本良子さん(73歳・仮名)。夫に先立たれて15年。今は遺族年金と合わせて月15万円ほどの年金の範囲で暮らせるように努力し、大きな出費が必要なときは、夫婦でコツコツ貯めた1,700万円を取り崩して、慎ましくも穏やかな日々を送っていました。
そんな良子さんの生活に変化が訪れたのは、6年前のこと。一人娘の明子さん(45歳・仮名)夫婦から、一人息子の翔太くん(仮名)の中学受験について相談を持ちかけられたのがきっかけでした。
「翔太を、できれば私立の中学に入れてあげたいの。でも、うちの収入だけだと少し厳しくて……。お母さん、少しだけ援助してもらえないかしら」
月々5万円ほどの援助が欲しいという娘夫婦の申し出に、良子さんは一瞬、自身の生活のことが頭をよぎりました。しかし、「かわいい孫のためなら」という思いが、その不安をすぐに打ち消します。成績優秀で、少し照れ屋な翔太くんの笑顔が目に浮かびました。
「ええ、もちろんよ。翔太のためだもの」
二つ返事で引き受けた良子さんの、新たな「節約生活」が始まりました。毎月5万円の仕送りは、年金暮らしの身には決して小さな額ではありません。食費を切り詰め、以前は「美味しそう」と気軽に手にしていた大好物の和菓子を我慢することが増えました。趣味の旅行や友人との会食も断ることが増えました。それでも徐々に減っていく預金通帳の残高に、やはり将来の不安が大きくなっていきます。しかし、明子さんから定期的にかかってくる電話が不安を打ち消してくれます。
「今日、翔太が部活でレギュラーになったのよ!」
「テストの成績が上がったって、先生に褒められたみたい」
孫の成長を知らせる娘からの報告を聞くたびに、良子さんは「仕送りしてよかった」と心から思ったといいます。