40代転職…注意点と成功のポイント
田中さんのような失敗は、決して他人事ではありません。転職市場、特にミドル世代を対象とした求人では「成果次第で高収入」という魅力的な言葉が躍りますが、その言葉を鵜呑みにした結果、多くの人が「こんなはずではなかった」と後悔しているのが実情です。
厚生労働省『令和6年上半期雇用動向調査』によると、転職によって「給与が増加した」と回答したのは40.0%。一方、「給与が減少した」と回答したのは28.9%で、少数派ではあるものの、転職によって給与が減ることは、珍しいことではないのです。
また、サラリーマンとしても中堅に位置する40代の転職は、それまでのキャリアを評価されるものとなりますが、世の40代はどのような思いで転職へと舵を切っているのでしょうか。
エン・ジャパン株式会社が2025年7月に発表した『ミドル世代の「転職理由」実態調査』によると、40代が転職で最も実現したいことは「給与・待遇のアップ」が31%で最多でした。調査に寄せられた声のなかには「入社から今まで年収が上がっていないので将来が不安」といった切実なものもあり、田中さんと同様に、現状の給与への不満や将来への経済的な不安から、より良い待遇を求めて転職を決意する40代が多いことがうかがえます。
しかし、その思いが強いあまり、田中さんのように求人情報の魅力的な言葉だけを信じてしまうと、思わぬ落とし穴にはまる危険性があります。特に「成果次第で高収入」をうたう求人には注意が必要です。高いインセンティブには、達成困難なノルマが課せられている場合も少なくありません。給与体系の詳細、特に基本給とインセンティブの割合や、インセンティブの平均的な支給実績などを面接の場で具体的に確認することが重要です。
また、同調査では、40代が転職を考える上で不安に感じることとして「これまでの経験・スキルが通用するか」が55%と、こちらも最多となっています。給与とは、自身のスキルや経験が企業へもたらす価値への対価です。年収を上げるためには、培ってきた経験が転職先でどのように活かせるのか、そしてそれが企業の利益にどう貢献できるのかを客観的に判断し、的確に伝える必要があります。
田中さんの失敗談からもわかるように、扱う商材やサービスの競争力が低ければ、いくら個人の営業スキルが高くても成果を出すのは困難です。企業の事業内容や市場での立ち位置、将来性といった点までしっかりと見極めることが、結果的に安定した収入へとつながります。
40代の転職は、その後のキャリアを大きく左右する重要な決断です。「給与アップ」という目標は大切ですが、その数字の背景にある労働条件や、自身の経験が本当に活かせる環境なのかを多角的に見極める冷静な視点が、後悔しない転職を成功させるための鍵となるでしょう。
[参考資料]
厚生労働省『令和6年上半期雇用動向調査』
エン・ジャパン株式会社『ミドル世代の「転職理由」実態調査』