まとまった退職金を手にし、「これだけあれば老後は安泰だ」と胸を撫で下ろす。しかし、その安心感が、時として将来設計の甘さにつながることも。長年の頑張りの結晶である大切なお金を、ほんの数年で失ってしまう……その原因は?
「退職金3,000万円あるんだし大丈夫」…68歳夫の豪語も、2年で消えた大金の行方に妻、絶望 写真はイメージです/PIXTA

退職金「平均1,896万円」の現実と、誰もが抱える老後の資金不安

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者の平均退職給付額は1,896万円。もちろん、これはあくまで平均値であり、企業規模や勤続年数によって額は大きく変動します。ただ雄二さんが受け取った定年退職金は、平均を大きく超えるものであり、「このお金さえあれば老後は安泰」と妻・美佐子さんが安堵するのも当然のことでした。

 

しかし、その貴重な老後資金が、わずか2年で3分の1にまで目減りしてしまったのが鈴木さん夫婦の現実です。このケースは決して他人事ではありません。多くの人が、老後の生活に対して経済的な不安を抱えています。公益財団法人 生命保険文化センター『2022(令和4)年度 生活保障に関する調査』によると、老後の生活に対して「不安感あり」と答えた人は82.2%*。不安の内容(複数回答)で最も多かったのは「公的年金だけでは不十分」で79.4%。「日常生活費の不足」(57.3%)、「自助努力による準備が不足する」(36.3%)、「退職金や企業年金だけでは不十分」(31.4%)と続きます。やはりお金に関する不安が上位を占めています。

 

*非常に不安を感じる、不安を感じる、少し不安を感じるの合計

 

長寿化が進む現代において、退職後の人生はますます長くなっています。インフレによる物価上昇も家計を圧迫するなか、退職金をいかに守り、賢く活用していくかは、多くの人にとって死活問題といえるでしょう。

 

「最近は持っている暗号資産がずいぶんと上がったらしく、「ほれみろ、俺の言った通りだろ」と得意げなんです。でも私はそんなドキドキはいりません。儲けていられる今のうちに、少しは預貯金に回してくれるといいのだけど……」

 

[参考資料]
厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』
公益財団法人 生命保険文化センター『2022(令和4)年度 生活保障に関する調査』