長年、馬車馬のように働き続けてきた会社員が、ふと我に返る瞬間があります。「自分は一体、何のために働き、何を犠牲にしてきたのか」と。それは、多くの人が50代で直面する「中年の危機」の始まりかもしれません。54歳のときに勤続29年の会社で降格処分となり、55歳で無職となった竹本和広氏も、かつて同じ悩みを抱えていました。現在はミドルシニアのキャリア支援に従事する同氏の著書『自分らしく生きる定年後の仕事 50代の働き方は「複業」で変わる!』(ごきげんビジネス出版)より、実体験から、人生の後半戦を本当に意味あるものにする方法を探ります。
毎日会食、週末は接待ゴルフ、馬車馬のように働き、通信会社の執行役員まで登りつめた50代父…「長男の結婚披露宴」で後悔した理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

自己対話には「孤独な環境」と「手書きのメモ」が効く

自己対話するおすすめの方法を、環境とアウトプットに分けて紹介します。

 

環境

会社員として忙しい毎日を過ごしていると、自己対話する時間的制約もあると思います。そこで、おすすめは孤独な環境を用意することです。

 

選んだ孤独はよい孤独」というフランスのことわざがあります。私は孤立を経験したので実感しました。孤立は選べませんが、孤独は選べます。私の体験もフランスのことわざどおりでした。

 

私は無職のときに孤独を求めて山梨県富士吉田市へ行きました。富士吉田市では目のまえに富士山を拝むことができます。家族やいつもいる場所から離れ、自分のことを誰も知らない場所へ行きました。富士山を目のまえにし、これからどうするか? 何がしたいか?と自分と向き合いました。

 

孤独な環境にいるとき、自分と多く話をします。すると、心の奥にしまい込んでいた古い記憶が蘇ってくるのです。孤独な時間のなかでこそ、本当の自分の心の声が聞こえてきた気がします。

 

近年はリトリートも流行っています。あなたも日常から距離を置き、意識的に立ち止まり、孤独な環境を用意してはいかがでしょうか。

 

※ リトリート:日常生活から一時的に離れ、心身をリフレッシュする体験のこと。

 

アウトプット

アウトプットは、日記やノートに書くこととスマホのメモを活用しました。日記やノートは手書きがおすすめです。思いついたことを一旦書き出し、あとから「複業の目的言語化シート」を使って言葉を整えていきましょう。

 

スマホは通勤の移動中に活躍しました。複業の目的を考えるようになると、移動中など歩いているときに言葉が降りてくる瞬間があります。そういうときはスマホです。音声入力できるアプリが活躍して言語化に役立ってくれました。

 

日記やノートは誰に読まれるわけでもないため、思いのまま書けます。私の場合、複業の目的を2021年から思いのまま書きはじめました。書きはじめた当初は「世のため人のために働く」と、いま思えば抽象的な言葉でスタートしました。