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TAOKE ENERGYがもつ「構造的な強み」の正体
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、世界各国で取り組みが進むなか、日本でも再生可能エネルギーの普及が進んでいる。たとえば東京都では、2025年4月から新築住宅等への太陽光発電設備の設置が義務化された。この制度の善し悪しは別として、自然エネルギーの利用は、一般家庭にも着実に浸透してきている。
一方、自然エネルギーは「発電量が不安定」という課題がある。この課題を解決するのが系統用蓄電所だ。
系統用蓄電所は、余剰電力を供給や吸収することで電力の需給バランスを調整し、電力系統の安定性を確保する役割がある。
この系統用蓄電所に、「投資機会(※)」としての側面があることはご存じだろうか。
(※)関連記事「系統用蓄電所投資」は儲かる?“国策”が後押しする同投資の旨み【取材】
TAOKE ENERGY株式会社は、系統用蓄電所のワンストップサービスを提供する企業として、市場での存在感を高めている。
陸劍洲代表取締役社長(以下、陸氏)「TAOKE ENERGYは、土地探しから開発、建設、投資(共同投資・自社投資)、運営、アフターサービスまで一社でのワンストップサービスを提供しています。
特徴的なのは、蓄電所のEMS(エネルギーマネジメントシステム)も自社開発し、運営チームも自社で構成している点です。このような完全なワンストップサービスを、日本国内で提供できる企業は非常に少ないのが現状です」
また陸氏は、ワンストップサービスの重要性について次のように語る。
陸氏「私たちが本格的に参入した2022年から考えると、日本国内の系統用蓄電所市場は大きくなってきたと感じています。一方、成熟期というには早く、市場拡大の余地はまだまだ残されていると考えていいでしょう。
ただし、新たな事業者が簡単に市場に参加できるかというと、それは難しいです。単独で市場に参入しようとすると、開発業者から土地、EPC(設計・調達・建設)、設備メーカーなど、さまざまな協力先を自ら探し、組み合わせる必要があります。
こうした数多のサプライチェーンうち一部でも能力不足があると、プロジェクト全体に大きな影響が出てしまうのです。
実際に、システムインテグレーターを名乗っていてもEMSの開発を外部委託していたり、運営チームを自社で構成していなかったりするケースが多いです。
その点当社は、開発から運営、アフターサービスまですべてを自社で完結できる体制を構築しています。そしてこの点こそ、当社の大きな強みだと自負しています」
TAOKE ENERGYでは、投資家が資金提供のみで蓄電所事業に参入できる仕組みを整えている。
専門的な知識や経験がなくても、同社のワンストップサービスを活用することにより、蓄電所投資という新たな事業機会が得られるというわけだ。
2025年度、系統連系数が10倍以上に拡大
2022年10月、TAOKE ENERGYは高圧・特別高圧向けの系統用蓄電所事業を本格的に開始した。2024年度の系統連系数は2件にとどまっていたが、2025年度には21〜23件へと飛躍的に拡大する見込みだ。
陸氏「2025年12月末までに13件の系統連系が完了しており、2026年1月から3月にかけて、さらに8〜10件の連系を予定しています。
この急激な増加には、二つの要因があります。一つは市場に参入する投資家が増えたこと。もう一つは、当社がこれまで準備してきたプロジェクトが、開発から系統連系までの必要な期間を経て、実を結んできたことです」
特に注目すべきは、栃木県小山市で12月1日に運用を開始した案件である。
これはTAOKE ENERGYが開発・建設を担当し、完工後に事業主へ事業権利を譲渡したもので、一次調整力(※)市場に参加する設備として重要なマイルストーンになった。
(※)一次調整力とは……電力の需給バランスと周波数を維持するために、最も応答速度が速く(10秒以内)、瞬間的な電力変動に対応する「調整力(ΔkW)」を調達する市場のこと。電力系統の安定化に不可欠な、秒単位の短周期変動に対応する役割を担う。
陸氏「一次調整力市場への参加には、高い精度と安定性が求められます。当社の設備が他社案件でも一次調整力市場で運用されているということは、当社の技術と設備の信頼性が高く評価されている証拠です」
また、2025年度に系統連系する21〜23件のうち、約10件は同社が自らアグリゲーター業務を担当する。アグリゲーターとは、複数のエネルギー資源を統合管理し、電力市場での取引や需給調整を行う事業者のこと。このアグリゲーター業務を自社で行うことで、開発から運営までの完全なビジネスループを構築していく。
当初の計画よりは若干遅れているものの、2026年3月に開催される展示会で、運営データやオークション状況、収益状況などを初公開する予定だという。
陸氏「自社投資案件の運用データを公開することで、開発から運営、そして収益化に至るまでの完全なビジネスループが構築されていることを実証したいと考えています。これは、当社の設備とサービスの信頼性を示す重要なステップになるでしょう」
2026年度はサービス体制をさらに高度化
2025年度の大きな成長を受けて、TAOKE ENERGYは今後さらに大きな目標を掲げる。
2026年度の系統連系目標は約50件。2025年度の21〜23件から、倍以上に拡大する計画だ。加えて、50件の蓄電所において自社でアグリゲーター業務を担当する予定としている。
陸氏「2026年度には、これまで以上に多くの蓄電所を開発・連系し、自社で運営管理する体制を強化していく予定です。これにより、投資家の皆さまにより安定したサービスを提供できるとワクワクしています」
またサービス展開の方向性について、2026年前半は設備販売に力を入れるという。同社の強みである「用地選定や開発、運営までを含むワンストップサービス」の提供だけではなく、系統用蓄電池システムを「設備単体」として切り分け、その販売に力を入れるようだ。
さらに、2026年下半期には、運営サービス(アグリゲーションサービス)の単独販売を開始する予定だという。系統用蓄電所向けの運営サービスを設備販売と切り離して提供することで、自社製品ではない設備を導入した系統用畜電所に対するサービス販売が可能となる。
TAOKE ENERGYでは従来、自社開発の蓄電所や蓄電池を導入した事業者・投資家に対するアグリゲーションサービスの提供を重視してきた。しかし、アグリゲーションによって系統用蓄電所の収益性が大きく左右されることから、当該サービスへのニーズが高まっているという。同社ではこの現状を鑑み、自社開発の設備が導入されていない系統用蓄電所に対してもアグリゲーションサービスを提供していく予定としている。
陸氏「当社のこれまでの経験とノウハウを活かし、投資家の皆さまが資金提供のみで蓄電所事業に参入できる環境をさらに整備していきます。
2026年度は既存サービスの品質向上に集中し、新規サービスの立ち上げは見送る予定です。まずは、当社の強みであるワンストップサービスのさらなる質向上と、設備やサービスの切り分け販売に注力します」
市場が未成熟な現段階だからこそ、完全なバリューチェーンを提供できる企業の価値は高い。
TAOKE ENERGYは、系統用蓄電所事業者として「ワンストップサービスを提供できる」という構造的な強みを有している。さらに、今後は他社設備が導入されている系統用畜電所についても、収益向上を目指す運営サービスを販売していくという。
これにより、系統用蓄電所投資をゼロから検討する投資家はもちろん、すでに他社設備を導入して開始した系統用畜電所の「収益性を高めたい」と悩んでいる投資家・事業者にとっても、心強いパートナーとなることだろう。
