相続にまつわるトラブルは、誰にでも起こりうる身近な問題です。実際、調査では約16%が親族間のもめ事を経験しています。被相続人が亡くなった後、遺産の使い込みや分割協議での対立が発生しやすく、円滑な相続には法的知識や事前の備えが不可欠です。
まさか伯母さんが…祖母の遺産から消えた〈4,000万円〉。金の無心を繰り返していた親戚の「衝撃的な言い訳」と21歳孫の「たった一人の戦い」 (※写真はイメージです/PIXTA)

消えた4,000万円…伯母が提示した不可解な事実

セレクトラ・ジャパン株式会社/「スマートマネーライフ」が行った調査によると、相続経験者(1,802人)のうち、「相続トラブルを経験した」と回答したのは289人。およそ16%がトラブルに巻き込まれています。都内在住の大学生、鈴木翔太さん(21歳・仮名)も、そんな親族間の金銭トラブルに巻き込まれた1人。発端は、1年前に亡くなった父方の祖母の遺産相続でした。

 

翔太さんは一人っ子として、教師である両親のもとで大切に育てられました。しかし、翔太さんが小学5年生のときに父が若くしてがんに罹患し帰らぬ人に。父の死後、母は女手一つで翔太さんを育てるために懸命に働きました。その母を支えたのが、翔太さんの祖母だといいます。

 

「祖父は僕が生まれる前に亡くなっていたので、祖母も母子家庭の大変さを理解してくれていたんだと思います。近くに住んでいたこともあり、仕事で忙しい母のために夕食の準備や掃除に来てくれるなど、本当に親身になって助けてくれました」

 

母と祖母の愛情に見守られ、翔太さんは学業に励み、第一志望の大学に合格。現在は奨学金を利用し、アルバイトもしながら充実した大学生活を送っています。多くの人に支えられてきたと感じる翔太さんですが、どうしても好きになれない存在がいました。父の姉にあたる伯母です。

 

「昔から、とにかくお金にうるさくて、少しずれている人でした。お祝いを渡してもお返しはなく、家に来たら『これ、もらっていい?』と食べ物などを持ち帰る。少額ですが母はお金を無心され、返済を求めると『ちょっと待って』とごまかされる。そんなことが日常茶飯事でした」

 

父が亡くなってからは顔を合わせる機会も減りましたが、親戚が集まる盆や正月には、相変わらずの振る舞いを目にしてきたといいます。そして、祖母の死をきっかけに、翔太さんはその伯母と直接対峙することになるのです。祖母が病で入院し、余命半年と宣告された頃、翔太さんは病室で祖母から直接、相続に関する話を聞かされていました。

 

「祖母から『この通帳に5000万円ほどあるのが全財産。お父さんの代わりに翔太にも相続する権利があるから、おばさんと2人で分けなさい。そのお金でお母さんを少しでも楽させてあげてね』と、通帳を見せてくれて」

 

祖母の言葉を胸に、翔太さんは遺産分割協議に臨みました。しかし、そこで伯母から提示されたのは、あまりにも不可解な事実でした。伯母が「お祖母ちゃんの遺産はこれ」と見せてきた通帳の残高は、わずか1,000万円。4,000万円もの大金が消えていたのです。

 

「伯母は『お祖母ちゃんが使ったんじゃない?』と言いますが、入院していた祖母がそんな大金を使えるはずがありません。おかしいと指摘すると『ないものはないんだから仕方ないでしょ!』と逆ギレされました」

 

大学生である自分を「子ども」と侮り、言いくるめられると思ったのでしょう。用意周到に作成された遺産分割協議書に判を押させようと迫る伯母に対し、翔太さんは毅然とした態度で反論しました。

 

「『4,000万円が消えているのに、曖昧な状態で判なんて押せません。警察に相談します』と言ったんです。そうしたら、急にトーンダウンして、なんとかその場で判を押させようと下手に出てきました」

 

翔太さんは現在、弁護士に相談し、祖母の口座の取引履歴を金融機関から取り寄せる手続きを進めています。

 

「調べればすべてわかること。正直に話してくれればまだ考えましたが、騙して判を押させるようなやり方は絶対に許せません」と、その声には強い意志がこもっていました