他人事ではない、高齢化と介護の現実
夫を亡くした妻に、その親を介護する法的な義務はありません。しかし、佳代さんのように、法律ではなく、長年築いてきた情や絆で義父母を案じ、関わり続ける人は決して少なくありません。厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、「要介護者等」と「主な介護者」の関係をみると「子の配偶者」は全体の5.4%。この結果は、あくまでも同居していることが前提で、別居しているケースがどれほどかはわかりませんが、義母や義父の介護を行う人も決して珍しくはありません。
また、内閣府『令和5年版高齢社会白書』によると、65歳以上の要介護者等について、介護が必要になった場合に「家族に介護を頼みたい」と回答した人は約3割いる一方で、「介護サービスを利用したい」と考える人が6割を超えています。春枝さんの行動は、まさにこの「子に迷惑をかけたくない」という思いの表れだったのかもしれません。
認知症高齢者の数は年々増加しており、2025年には約675万人、65歳以上の高齢者の約5人に1人が罹患すると推計されています。佳代さんと春枝さんのケースは、決して他人事とはいえないでしょう。
「これからは、できる限り顔を見に行こうと思っています。私たちは、他人なんかじゃありませんから」
[参考資料]
厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』
内閣府『令和5年版高齢社会白書』