(※写真はイメージです/PIXTA)
まじめ一筋で手にした、約束されたはずの老後
加藤哲也さん(65歳・仮名)は、60歳で定年を迎え、38年間にわたる警察官としての務めを終えました。
「定年までは、本当に仕事一筋の毎日でした。市民の安全を守ることだけを考え、身を粉にして働いてきました」
そう語る加藤さんの表情からは、長年、規律正しい生活を送ってきた実直な人柄がにじみ出ています。退職にあたり、受け取った退職金は2,400万円。総務省『令和6年 地方公務員給与実態調査』によると、定年退職を迎えた警察官の平均退職金は2,303.9万円。加藤さんの退職金はちょうど平均値といったところです。一方、厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、大学・大学院を卒業し、管理・事務・技術職として勤め上げた人の平均退職給付額は1,896万円。危険と隣り合わせの職務をまっとうした加藤さんですから、会社員と比べて退職金が多いのも納得です。
また65歳を迎えた加藤さんは、年金を受け取り始め、いよいよ老後がスタートといったところ。その額は月20万円ほどです。3年後には、妻も年金を受け取り始め、夫婦で34万円ほどの年金を受け取るようになります。厚生労働省によるモデル夫婦*の年金受取額は月23万2,784円。それよりもずいぶんと余裕ある老後が叶いそうです。
*平均的な収入で40年間就業した場合に受け取り始める年金=老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)
「今までは、職業柄、家でもピリピリしていたかもしれません。そんな私に、妻はよく耐えてくれました。これからは心穏やかに、のんびりと暮らしていきたいと思っていました」
そんなとき、たまたま立ち寄った銀行でふと1枚のポスターが目に入りました。それは高齢者向けの資産運用セミナーの案内でした。それまで仕事ひと筋だった加藤さんは、正直、お金に関しては無頓着だったのです。
「少しは勉強をしてみよう。軽い動機で参加することにしたんです」