資産形成とはどういうもの?何から始めるべき?

資産形成は、個々人の置かれた状況によって進め方が異なります。 すでに資産家となった方が資産をどう増やすかという話ではなく、多くの方がそうであるように、大学を卒業して会社に勤め、20代、30代と年齢を重ねる中で、どのように資産を築いていくかという視点でお話しします。
まず、収入の要素は大きく4つに分解できるという考え方があります。 私が自身の経験に照らして最も分かりやすいと感じる4つの柱は、以下の通りです。
給与所得:会社に勤務することで得られる収入です。
不動産所得:不動産を保有し、家賃収入や売却益によって得られる収入です。
有価証券所得:主に株式投資を指します。 保有中の配当や、値上がりした際の売却益が収入となります。
事業所得:自身でビジネスを所有し、そこから得られる収益です。 この4つ目の柱を築けると、経済的に安定しやすくなります。
これら4つの柱を、人生という長いスパンの中でどう育てていくかを考えることが、資産形成の一つのアプローチと言えるでしょう。
私自身の話をしますと、元々ゴールドマン・サックスやソフトバンクといった会社でお給料をもらうところからキャリアをスタートしました。 そして、33歳の時、10年間働いて貯めた資金を元手に初めて不動産を購入しました。 不動産投資はある程度の元手資金が必要だからです。 そこから少しずつ不動産のポートフォリオを増やし、同時に株式投資も行っています。 幸運なことに、現在ではADIの株を所有する機会に恵まれ、ビジネスオーナーとしての側面も持つに至りました。
では、これら4つの中で、初心者でも始めやすいものはどれでしょうか。
金額的な手軽さで言えば、株式投資が挙げられます。 しかし、株は儲かる可能性がある一方で、相応に損をする可能性も高い投資対象です。 資産形成の原則は、資産が「増えていくこと」に他なりません。 にもかかわらず、価格が上がったり下がったりする可能性のあるものから始めてしまうと、もし最初に損失を出してしまった場合、「株は怖い」「損するくらいなら現金や預金の方がいい」という考えに陥ってしまう可能性があります。
ですから、株はテクニカルには始めやすいかもしれませんが、資産形成の第一歩として本当に適しているかというと、少し怖い側面があると言えるでしょう。
不動産投資と株の違いやメリットとリスク

不動産投資と株式投資はよく比較されますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。 私の視点では、最大の違いは「時価が通知されるかどうか」という点にあります。
もちろん、不動産もその価値は常に変動しています。 しかし、その価格変動を日々通知されるのが株式投資です。 昨日2,900円だった株価が今日2,850円になれば、50円下がったという事実を突きつけられます。
一方で、現物不動産の場合、市場が動いていたとしても、その損益が具体的に通知されるのは、最終的に売却する時です。 この違いは、投資を続ける上で精神的に大きな影響を与えます。 一生懸命働いて貯めたお金を投じた結果が、日々の値動きで示されてしまうのは、精神的な負担が非常に大きいのです。 その点、不動産は日々の値動きに一喜一憂することが少ないため、投資の入り口としては始めやすいのではないかと考えています。
しかし、不動産投資には別種の、非常に高いメンタルハードルが存在します。それは「借金」です。 一般の方が不動産投資を行う場合、ほぼ100%に近い方が金融機関から融資を受けて物件を購入します。 自分の家を買うための住宅ローンであれば、多くの人が「そういうものだ」と受け入れられますが、「資産を増やすため」に数千万、時には億単位のお金を借りることには、途端に強い抵抗感を覚えるのです。
この「借金に対する心理的な壁」を越えられるかどうかが、不動産投資を始められるかどうかの分かれ道と言っても過言ではありません。
投資メンタルのコントロール方法

私自身、実は非常にメンタルが弱い人間です。 だからこそ、「絶対に損をしたくない」という気持ちが人一倍強い。 そのために、「どうすれば損をしないか」という組み立てを徹底的に考えます。 そのような入念な準備ができて初めて、大きく張る(=大きな金額を投資する)ことができるのです。
もし自分の投資に対する見立てが正しかったとしても、恐怖心から大きく張ることができなければ、得られるリターンも限定的になってしまいます。
例えば、私にとって「1億円を借りて狛江市に木造アパートを1億円で買う」ことは、メンタル的なハードルを越えられます。 なぜなら、狛江市は賃貸需要が安定しており、年間800万円の家賃収入が見込め、金利が2%なら年間200万円を返済しても手元にキャッシュが残る、というようにリスクを自分自身で管理できるからです。 このように、自分が納得し、消化できるリスクであれば、1億円という大きな金額を投資することができるのです。
しかし、「1億円分の日本企業の株を買う」と言われると、たとえその企業が将来的に大きく成長すると確信していても、日々の値動きがあるため、買うのをためらってしまいます。
資産形成の初期段階では、特に若い頃は、いかに「大きく張れるか」が重要になります。 しかし、怖いから張りたくない、というのもまた、誰もが抱く自然な感情です。 だからこそ、自分のメンタルの弱さを認識して、メンタルが耐えられる時価評価やアセットクラスのものからスタートするべきだと考えます。
その観点で不動産と株を比較し、ある程度の資産を築くことを目指すのであれば、借入によって自己資金以上の投資ができる(レバレッジが取れる)上に、事業構造がシンプルで理解しやすい不動産から入っていくのが、私の経験としては自然な流れだったのです。
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株式会社アーキテクト・ディベロッパー
代表取締役社長 木本 啓紀
ゴールドマン・サックス証券株式会社アジア・スペシャル・シチュエーションズ・グループに18年間在籍。ローン債権、債券、不動産、エクイティ、証券化商品、オルタナティブなどあらゆるプロダクトを対象とした投資業務を経験。その後、ソフトバンクグループ株式会社に転じ引き続き投資業務に従事。2019年9月 当社取締役に就任。その後、ソフトバンクグループを退職し、2021年9月 代表取締役CEOを経て、2025年7月代表取締役社長に就任、現在に至る。

